
中編
人みたいに鳴く猫
匿名 2015年8月8日
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中学1年の夏休みでした。一斉送信のメールで友人から「うちの猫いなくなっちゃった~…明日一緒に探してくれる人、郵便局の前に10時にきてくれたら助かります…」とのこと。暇なうえにみんなに会いたかったのでいくことにしました。
翌日は私と猫の飼い主を含めて6人があつまりました。猫の写真や名前、特徴を聞き、いよいよ捜すことになりました。(ちなみにど田舎です。)
バラバラになって探して、見つからなくても12時にまた郵便局に集合、見つけたら電話ね!そういって6人はバラバラに探し始めました。
猫の名前を呼びかけながら、たまに友達と会って「いた?」「いなーい」なんて話てまた探し始める、というのを繰り返して一時間くらい探しました。そして私はある廃墟の庭に入りました。その家については何も知らないのですが、相当前から廃墟というか空き家で、またかなり古い家でした。
すると「うぁ~うぁ~」と、廃墟の縁の下から赤ちゃんの声のような鳴き声が聞こえました。カラスとか猫って、たまに人みたいな声のやついますよね。私はその鳴き声を聞いたとき(猫だ!!!)そう思ったんです。友達の猫の特徴に、人みたいに鳴く、なんてものはありませんでしたが、猫がいるということだけで充分で、急いで縁の下を覗きました。
うぁ~うぁ~うぁ~
相変わらず鳴き声は聞こえます。が何もいません。そのうち腰が疲れてきて一度顔をあげ、もう一度縁の下を覗きこみました。
う゛ぁ゛~!!!!!!!!!!
もう一度覗きこんだ縁の下には、
目元が潰れて赤黒く陥没し、口だけを大きく開けて泣き声をあげる赤ちゃんの顔がありました。しかも縁の下を覗いた私との顔の距離はわずか数㎝。生暖かい息が鼻にかかりました。大きく開かれた口は血でも飲んだように赤く染まっていたように見えました。
うっわああああああああああ!!!!!
私は大声をあげて庭を飛び出しました。
するとそこに猫を探しいた他の友人二人が歩いていました「どうしたの?!」と聞かれ、私は「あそこのボロい家の下に化け物がいる!!!」と言いました。幸い二人ともそういったものを信じてくれるたちの人で、3人でまた例の廃墟へむかいました。
でも私はもう縁の下を覗くような勇気はありません。「そ、そこらへん!下!き、気を付けなよ!!」と友人に言う私は情けないほどビビっていました。しかし友人二人は「何もいないよ~?」「なんか…ここ臭くない?」と言いました。そう言われるとなにか臭うような…
「こっちがわ!」そういって友人二人は少し右側(敷地に入る入口側)へ行き、また縁の下を覗きました。すると二人は同時に「「うわ…」」といって顔を見合わせました。(え…反応薄…)とくだらないことを思いながら「どうしたの?」の聞くと「○○(飼い主)の猫死んでる…」と言いました。
私も覗きました。たしかに友人が写真で見せてくれた猫でした。その後友人に電話し、友人と友人のおじいさんもきて、猫を縁の下から引っ張りだしました。友人は泣き出しました。友人の猫はあまりにもひどい状態でした。
食いちぎられた
その表現がぴったりな様で、腹部を何かに食われたようになっていました。「犬かなんかにいじめられたのかな…」友人のおじいさんは言いました。
私は今でも、友人の猫を食いちぎった犯人はアレなのではないかと思っています。
後日談ですが、2学期の自由研究の授業で、私は『私の町の廃墟』という意味不明なことを男友達と3人で調べることにしました。もちろん私はあの家について知りたかったからです。3人で土曜日にあの廃墟の近くに住んでいる家に聞き込みをしました。すると、1つ気になる話がありました。3人くらいのかたが同じことをいっていたのですが
20年くらい前にあの家の庭にブルーシートが張られ、パトカーと救急車がやってきた。そのあとあの家は空き家になった。
調査結果を書く紙を先生に提出してから数日後、昼休みに3人揃って職員室に呼ばれ、本当に申し訳無いけど自由研究のテーマを変えてほしいと担任に言われ、まったく違うテーマで調べることになりました。
震災であの廃墟は流失。もうありません。
あの廃墟で何があったのでしょうか。縁の下にいたアレがなんなのか、今もわからず仕舞いです。
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