
私の中学生時代のある秋の夕暮れ、友達と別れた後、一人で帰る途中、ふと公園の隅に古びたベンチが目に留まりました。いつもとは違う道を選ぼうと思い、近づいてみました。
そのベンチは、草に覆われていて、周囲は薄暗く、何か不気味な雰囲気を醸し出していました。「ここで誰かが待っているのかも」と思いつつも、好奇心にかられ、私はベンチに座ってみることにしました。
その瞬間、耳元で「ここに来てくれないか」という低い声がしました。驚き、思わず「誰がいるの?」と尋ねると、声はさらに近づいてきて、「こっちに来い」と命じました。恐怖が全身を駆け抜け、私は立ち上がろうとしたものの、足がすくんで動けませんでした。
その時、背後から「大丈夫かい?」と声がかかりました。振り返ると、通報を受けて来た市民が立っていました。彼は私の様子を心配そうに見ていました。「ここに何があったんだ?」と尋ねると、私はベンチを指さしましたが、そこにはもう何もありませんでした。
「ベンチ?そんなの見当たらないぞ」と彼は言いました。驚愕と混乱の中、私は「大丈夫です」と言い残し、その場を逃げ去りました。
翌日、あの場所に戻ってみたものの、やはりベンチは見当たらず、ただの空き地になっていました。
あの声に従ったら、私は一体どうなっていたのだろう。今でも考えると、ぞっとします。何がそこにいたのか、あの声の正体は何だったのか、わからないままです。
私の心の奥には、あの声が今でも残っています。何かが、私を待っていたのかもしれません。
あのベンチの正体は、一体何だったのだろうか…?
もしかしたら、今でも誰かを誘っているのかもしれません。
私は、もう二度とあの場所には近づかないと決めました。
そして、今もどこかにあの不気味な声が響いているのではないかと思うと、背筋が凍ります。
あの秋の夕暮れ、私が通った道は、もう二度と戻れない道だったのかもしれません。
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