
十代の頃の私は観光地で有名な海沿いの町に住んでいた。複雑な家庭環境で何度も引っ越しを繰り返したけれど、基本的に海から離れることはなかった。
こういう話をすると羨ましいという方もたまにいる。たぶん観光地として有名だからだろう。きっと私も地元の人間ではなかったら、そんなふうに思ったかもしれない。観光地は良い面ばかりをアピールするから。
これから話すのは悪い面の話だ。私の同級生や先輩、後輩の中ですでに十人ちかい人が亡くなっている。多くが溺死だ。運動神経抜群の人もいたし、そうでない人もいた。多くが若者でお酒を呑んで羽目をはずした人や自ら海に飛び込んだ人もいた。
でも、あの日、私が見かけた人はそういう種類の人ではなかった・・・。
私は中学生の頃、よく友人と二人で砂浜を歩きながら下校した。少し遠回りになるし、制服が潮臭くなるけれど、そんなことは気にもせずに、私たちは靴を脱ぎ裸足になって砂浜をよく歩いた。何の話をしていのかほとんど覚えていない。でも、あの頃は何時間でも話せた。
それは夕方だった。もう空は少しずつ暗くなってきていた。九月も終わろとしていて、サーファーもいなかった。
少し波打ち際から離れて歩いていた私たちは叫び声を聴いた。
「大丈夫かぁ!」
見ると波打ち際で見かけたことのある学生服姿の男の人が海に向かって叫んでいた。
何があったのだろう? 私と友人は同時に駆け出した。
「どうしたんですか?」
「小さい女の子が溺れているみたいなんだ」
私たちに気づいたその人は振り返りながらそう言った。
その人は同じ中学で去年卒業した人だった。何回か見かけたことはあったけど、話したことはない人。
その先輩は悔しそうに沖合いを指差した。差した指の先に小さく学生服が見えた。かなり遠くにその人はいた。確かその先輩といつも一緒に歩いていた野球部の先輩だとなんとなくわかった。
「怪我してなかったら俺も行ったのに・・・」
その先輩の言葉で、その先輩が足にギブスをしているのに気づいた。
「小さい女の子が溺れているんですか?」
「ああ」
そう言って先輩が指差した方向を見て見ると、学生服の先輩とかすかに動く白い物が見えた。あの一緒にくっついているのが女の子だろうか? 私も友人もそこまで目がよくない。それにもうだいぶ暗くなっていたから、正直よく見えなかった。でも、かすかに動く白い物が私と友人にも見えた。
「どうだ! 大丈夫か?」
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