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長編

少女 ( 創 作 )

えい 2018年12月22日
怖い 511
怖くない 388
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…………ましょう……て………つぎは………… 暗闇の中 小さな声だけが 何処からか聞こえて来る。その声は強弱をつけているようで 何処にいるのか?方向が定まらなかった。 耳を澄まし声を拾おうと回りの音を消し その声にのみ意識を集中させる。 ……たの………ねが……叶えま…ょ……こうして…… 次は……びこ……て……… それは 弾みをつけている様にも聞こえた。 歌?歌をうたってる? こんな真夜中の真っ暗な闇の中で? 数歩歩いて 立ち止まり そして耳を澄まし声を拾う。その行動を何度か繰り返すうちに 声の主に近付いている事に気付き 嫌な汗が流れた。 少女は歌う。 あなたの望み叶えましょう こうして ここに血を落し 次は 辻を飛び越えて 最後に辻の真ん中で供物を私と食べたなら あなたの望みは今 叶う。 暗闇の中 白く輝く少女が 辻の上でポンポン跳ねて遊びながら 歌っていた。 物陰から その少女を見ていた時 足に小石が当たり 軽い音を立てた。 その瞬間 少女はフッと消えてしまった。 その出来事に 呆然と立ち竦んでいると 頭上を少女の笑い声が走り去って行き 辺りは無音の暗闇が広がっていた。 少女が何者かは 分からない。 けれど 少女が歌っていた歌は ある種の呪いの様なものを歌っていたのではと 静寂の中 走り去って行った少女の声が消えた方を見ていた。 そんな事があったのも 忘れるぐらいの忙しさで日々 仕事に追われていた ある日 昨日まで 元気だった部長が倒れたと一報を受けた。 そして もう一人……。 社内で1、2を争う程の美人のHさんの風貌が真逆に思える程 変わってしまっていた。 そして社内で囁かれた噂。 Hさんは部長からセクハラを受けていた事。 執拗にHさんに迫っていた事。 Hさんが部長に呪いを掛けたんじゃないか?という話。 頭の中にフッと浮かんだ少女の声……。 まさか ?! 仕事を終え 帰宅しようとカバンに書類を入れていると フラフラと覚束無い足取りで 帰宅しようとしている Hさんの姿が目に入った。 何となくだけど……本当に何となくだけど… 何か凄く嫌な予感がして… カバンに書類を乱雑に押し込むと Hさんを追う様に会社から出た。 出たからって何をする訳じゃない けど…Hさんの後を付いて行った。 途中で Hさんはコンビニに入り 何かを買った。 出て来たHさんの手には小さなコンビニ袋が握られていた。 それからHさんは 公園に行き ベンチに腰掛け 夕暮れ迫る中 元気に遊び回る 子供たちの姿をボーッと眺めていた。 そのうち 闇が広がり出し 子供たちが親に手を引かれ帰ってしまっても Hさんは 誰も居なくなった公園の遊具を見つめていた。 それからどのくらいの時間 Hさんは公園にいるのだろう?と時計に目を落とそうとした時… あの少女の声が 何処からともなく聞こえて来た。 その声に惹かれる様に Hさんは徐に立ち上り歩き出した。 慌てて後を追った。 少女の歌声は やはり強弱がつけられていて 場所が何処なのか?分からなかった。 けれど Hさんは場所が分かっているかの様にスタスタと歩き続けた。 その後を少しの間をあけ着いて行く。 結構な距離を歩いてきた感覚がある。辺りは闇に包まれ 歩く人もまた 疎らだった。 歌声は 頭の中に響いて聞こえているようで 周りを歩く人は気付いていないようだった。 その疎らだった人もいつしか居なくなり Hさんと二人きり 夜の闇を歩いていた。 歌声が急に大きくなった。 Hさんの後ろから前を見ると 真っ白に輝く少女が 辻に立っていた。 辻に立つHさんと少女。 向き合うように立つと Hさんは コンビニ袋の中に手を入れガサガサと漁ると チョコレートの様な物を出し 半分に割ると 片方を少女に差し出した。 銀紙を剥ぎ チョコレートを口にしようとした時咄嗟に物陰から飛び出し Hさんに声を掛けていた。 「Hさんっ‼」 自分でも驚くほど大きな声が出ていた。その声は少し震えていた。 頭の中に浮かんで来る 供物を食べたら…望みが叶う?どういう意味だ? 何も分からなかった。分からなかったけど 嫌な予感だけが膨らんでどうしようも無く 気持ちが急いた。 「こんな所で何やってるんですか?帰りましょう‼」 そう言って近付こうとする。 が Hさんに近づかせまいとする少女が間に立ち通せんぼみたいに両手を広げた。 辻に立つHを見ていた。 Hさんは少し悲しそうな顔をした後 ほっとした顔をして チョコレートをかじった。 その瞬間 不思議な事が起こった。 さっきまで白く輝いていた少女が 普通に何処にでも居るような 小学生くらいの女の子になっていた。 驚いて 辻の方に目を向けると Hさんの体は白く光り出し そして もう一度 こちらを見て悲しそうな顔をして 目の前から消えてしまった。 少女はそれを見届けた後 暗闇の中に溶ける様に消えてしまった。 それから 会社では Hさんが居た記憶が全て消えた。誰一人として覚えてる人間はいなくなっていた。ただ……たまに…フッとHさんの事を思い出す時がある。 そんな時は決まって あの歌声が聞こえて来る。 少女の声じゃなく………Hさんの声で……

後日談:

  • 怖くはないか…な?

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