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中編

祖父と味噌煮込みうどん

けいすけ 2018年12月9日
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怖くない 401
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仕事が終わり、運動不足解消の為に街中を散歩がてら歩いていると頬に微かに白くて冷たいモノが当たりました。 昨日、私が住む地元の仙台にも初雪が降りました。 毎年、寒くなると思い出す不思議な出来事のお話をさせて頂きます。 私が中学三年生の11月のある寒い日、学校から帰ると自宅には父と兄だけでした。 祖母と母は出掛けていて不在でした。 おやつを食べて携帯を見ると、夕方の17時半で夕飯の準備の時間です。 「ねぇ、お父さん。私がたまに夕飯作って良い?」 「おっ、偉い‼栞は料理が美味いから楽しみだね。」 「頑張れ。火傷に気を付けるんだよ?」 兄と父に激励され台所に出陣。 まずは冷蔵庫を偵察…白菜と鶏肉と人参とうどんと…よし、今晩は煮込みうどん‼ その当時は祖父が亡くなったばかりで、四十九日が過ぎるまで祭壇に夕飯を供えていました。 味噌煮込みうどんだけでは他の器がガラガラで格好悪い…お浸しも付けるか。 因みに、料理中に背後に視線と気配がありましたが…優しい雰囲気をなんと無く感じたので怖くはありません。 無事、味噌煮込みうどんの汁が出来て味見をしてもらった兄と父の合格点を貰いました。 意気揚々と味を染み込ませようと鍋にうどんを投入…。 それから30分後に母と祖母が帰宅して、夕飯の準備。 祖父のお供えの器にお浸しと漬物とご飯と埋め合わせに蜜柑を置いて後はうどんを分けるだけ…と、鍋を開けた私はその場で固まりました。 うどんが汁を吸ったので、汁なし味噌煮込みうどんが出来ていました。 「次からは別のお鍋に汁を作ってその中にうどんをいれるか、うどんは食べる前に入れると良いよ。」 「味は染みて美味しそうだね。頑張ったね。」 半ば爆笑気味に母と祖母はフォローをしてくれましたが、男性陣は爆笑していました。 「じいちゃん、汁なしうどんになったけど頑張って作ったから食べてね。お父さんもお兄ちゃんもあんなに爆笑しなくても良いじゃん。」 少し愚痴りながら手を合わせる私を祖父の遺影は優しく微笑み…いや、一瞬クスッと笑ったような表情をしながら見ていました。 タイミング良くお腹がなったので茶の間に戻り夕飯を食べました。 頑張った甲斐があり、汁は無いけど美味しく食べられました。 その日の晩に面白い夢を見ました。 「柔らかくて食べやすいね。美味しかったよ。大丈夫、栞は良いお嫁さんになれるからね。」 「流石、我が娘の孫ね…中々の手早い料理捌き。でも…うどんは最後にだよ。」 「将来が楽しみだね。」 祖父が供えた料理を曽祖父母と分けあって食べている夢を見ました。 料理をしている私の後にニコニコ笑いながら見守る曾祖母の姿もスクリーンに写し出されていました。 今でもそうですが、私が料理をしていると台所の窓越しに優しく微笑み曾祖母の姿を一瞬見ます。 …そんな不思議で少し笑える出来事を思い出しながら家路に付きました。 「お帰り、寒かったでしょ?雪降ってきたみたいだけど足元は大丈夫だったかい?」 夕飯を作りながら、優しい笑顔で出迎えてくれた祖母。 夕飯は…大好物の煮込みうどん。 私のテンションは上がる。 煮込みうどんを食べながら、煮込みうどんと祖父と曽祖父母の不思議な出来事の話を祖母にしました。 「きっと、一生懸命に頑張って作るおっちょこちょいひ孫が可愛くて心配で様子を見に来たのかね。あの時の栞の汁なし煮込みうどんも美味しかったわよ。」 思い出し笑いしながら語る祖母と曾祖母の優しい笑顔が重なりました。 「でも…私はちゃんと料理上達しているかな?」 「安心しな。汁なしうどん娘よりは成長したから。ばあちゃんの孫だし、曾祖母ちゃんのひ孫だから。曾祖母ちゃんも料理の達人だったのよ。」 …と、自信満々に笑顔で答えてくれた祖母の煮込みうどんは優しい味がして美味しかった。

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