
中編
祖母の初恋と戦争と不思議な声
けいすけ 2017年10月19日
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このお話は私が19才のお盆の時期に体験した不思議な出来事です。
母方の祖母は山菜おこわ(私達はふかしと呼んでいます。)を何時も作るとある場所へお供えに行きます。
それは、祖母の家の実家にある竹林の手前にある祠でした。
「ここはね、井戸もあるし防空壕もあるから絶対に行ってはいけないよ?危ないからね。それに熊だの猪だのも筍を食べに来るから危ないよ。可愛い孫が食べられたら悲しいし悔しいから。食べたくなるくらい可愛い子達だから気持ちはわかるけどね。」
祖母のお茶目でも愛情たっぷりの警告を私達は守っていました。
祖母はおふかしを御供えするときに幸せそうに微笑んでいるのを私は見ていました。
そんな事もあったなと懐かしんでいた19才の私はお盆時期でもあったので、祖母宅に泊まりました。
…この日の沢山の不思議な出来事は沢山の愛情をくれているのは生きている人達ばかりではないと言うのを教えてくれました。
そのお話はまたの機会にお話させていただきます。
両親が迎えに来る次の日に従姉の娘と遊んだりして仕事での疲れもたまっていた私はいつの間にか寝ていました。
その時に不思議な夢を見ました。
当時の私と同年代くらいの女の子が嬉しそうにウキウキしながら、お握りを持ち小走りで兵隊さんの格好をした男性の元に向かっていました。
若い頃の母と今の私の顔立ちを足して2で割ったような顔立ちでした。
何か微笑ましく思いながら眺めていました。
しかし、場面が代わり竹林を走っている私がいました。
いえ…竹林の中を逃げ惑うその女の子を肩越しに見ていたのです。
その少女の後ろには轟音を出す戦闘機が近付いていました。
何故か咄嗟に嫌な予感を感じて私は「逃げて‼」と 叫んでいました。
その声に少女が気づくと同時にもうダッシュで男性が少女に駆け寄り少女を抱き抱えるように竹林の間に押し出しました。
不意に私は少女を抱き抱えるようにしていました。
竹で少し腕を傷つけてしまいました。
突然の事に少女はビックリしていると、「こっちは見るな‼」との男性の叫び声と同時に機銃掃射の音が…。
戦闘機は鉄の鉛玉を降らせると飛び去っていきました。
少女の瞳には…お握りを届けていた男性の変わり果てた姿が…。
また場面が変わると明るい空間に兵隊さんの格好をしたその男性と立っていました。
「なおちゃんに伝えてくれ。幸せになれと。何時も傍にいて守るから安心して長生きしてくれと。何時も美味しいふかし有り難うと。」
と、優しく微笑んで私の頭を撫でてくれました。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
「栞、どうした?」
私は祖母と従姉の娘に起こされました。
「お姉ちゃん、血が出ているよ?大丈夫?」
よくみると小さな切り傷がありました。
手当てをした後に祖母に夢の話をしました。
「不思議な事もあるもんだね。その男性はばあちゃんの命の恩人で栞達のお祖父さんになるひとだったんだよ。」
…と、悲しい表情をしながら教えてくれました。
「今思い出すと、不思議な事があったんだよ。栞の声とそっくりの若い娘の声で危ない‼って叫ばれたり。栞が今着ている甚平のような服を着た少し光って見えた女の子に抱き抱えられたの。もしかしたら、助けてくれたのは貴女もかな。」
…と、涙目で優しく微笑む祖母でした。
「あのお兄さんがばあちゃんの初恋の人でしょ?」
…と泣きそうになるのをこらえようと祖母をからかいました。
「こーら、大人をからかうんじゃありません。でも、人の寿命と運命って悲しいし残酷だなって思ったけど、お祖父さんに出会って貴女がいて…この運命も悪くないかなって思った。」
…その時の祖母が失礼ながらも可愛らしかった。
「栞…覚えておきなさい。貴女の命は貴女を大切に思う人達からの贈り物で、貴女は私の大切な宝物だよ。大人の汚い部分を見てしまったから周りと考え方が違うと笑われてしまうこともあれば嫌なこともされたりして傷ついてしまうこともあるよね。沢山泣いても嫌になったら逃げても良いんだよ。でも、自分の命は粗末にはするな。栞はご先祖様やあの人がくれた大切な宝物だよ。」
…と、真剣な瞳で私の目を見てくれました。
パワハラにあっていたり色々と疲れていた時なので救われました。
「お兄さん…お祖母さんを助けてくれて有り難うございます。」
と、お仏壇から祈りました。
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