
短編
◇悟る人◇
としかず 3日前
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ある夏の話。
近所に一人暮らしをしている年配の男性が住んでいました。
その方はいつも近所の人にゴミ出しや騒音に対して注意をしていて、近所の人から少し気難しい人だと思われていました。
その男性がある日、近所の人たちの所に、引っ越すからと“お別れの挨拶”に来ました。
近所の人は、それまで男性に何度も注意をされていて、正直、あまりよく思っていなかった方が多かったのですが、笑顔で“お別れ”を言いに来た男性を見て、近所の人たちの印象も、だいぶ変わったそうです。
それから暫くして、男性の家の隣人から“鳩のフンの臭いが酷い”と苦情が出てきました。
実は以前から鳩の餌付けをする男性と隣人は揉めていました。
あまりにその臭いが酷い為、隣人は特殊な清掃業者を連れて、その男性宅に向かいました。
そこで男性宅の異変に気づいた隣人と清掃業者の方が警察に通報しました。
実は鳩のフンだと思っていた悪臭は、孤独死した男性が腐敗した臭いだったのです。
その後、遠方から来た故人の身内を名乗る中年男性が、近所の方に謝りに来ました。
話していて近所の人たちは不思議に思いました。
亡くなった男性には、引っ越す予定などなかったからです。
それなら何故、男性は“お別れの挨拶”に来たのでしょうか?
男性の死因は、自殺等ではなく、自然死だったそうです。
まるで、自分の死期を知っていたかのような、男性の行動。
この男性のように、自分の死期を悟る人はいるのでしょうか?
この怖い話はどうでしたか?
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