
俺が生まれ育った場所を走る鉄道路線は、大都市から終点の観光地まで乗り通す客が大半であり、途中の田舎の小さな駅を利用する人はほとんどいなかった。
途中駅にほとんど停まらない特急が高速で田舎町を通過していて、快速は本数もあり多めに停まるが利用客の少ない駅は通過、普通列車は2時間に1本くらいしか来ない2両編成の昔ながらのローカル電車がのんびりと走っていた。
その中に、秘境駅とも言える極めて乗降客の少ない山姥駅(仮称)という駅があった。
山の中の民家も近くにないような場所に山姥駅がある。
山姥駅に停まる自体、1日に数える程しかないので山姥駅にたどり着くこと、また山姥駅から帰るためには、時刻をしっかり調べておく必要があった。
ある日、興味半分に山姥駅で降りてみた。
駅員などはいないのでワンマンの運転士に切符を渡すが、滅多に乗降客がいないせいか意外な顔をしていた。
山姥駅で降りると、そこは平地にある古びたホームだった。
ホームから短い階段を下りていくと、今は使われていない改札と閉ざされた駅務室などがあった。
昔はこんな場所の駅でも駅員がいたんだろうかと思ってしまう。
その先は一面の山や森に囲まれた一見の民家すらも見えない文字通り何も無いところだった。
山道はあるが、途中で木が倒れていたり草が生い茂っていて歩いて進むのは困難なところだった。
スマホの地図で調べてみても、この近くに車の走れる道路などもない。
この駅から帰るには、事実上元来た電車で帰る以外に方法はなさそうだった。
そんな俺を尻目に目の前の線路を特急や快速が高速で通過していく。
乗客の大部分にとってここは通り道でしかないはずだった。
駅周辺をもう少し探してみると、左手のすぐ行き止まりになる山道なんだが、よく見ると近くに祠のようなものがあった。
「何だろう?」
俺は祠の中に入ると、そこには無数の仏像が安置されていた。
石でできた比較的綺麗な仏像だが、こんな場所でたくさんいると不気味に感じた。
俺は仏像に見られているような感じがしてきた。
そのあと、俺は駅に戻り帰りの電車が来るまでビクビクと待っていた。
祠の方には目もやらないものの、電車が来るまで俺はたくさんの仏像に見られている感じがずっと止まなかった。
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