
私が働いていた小さな図書館には、毎日のように訪れる常連さんがいました。見た目は50代後半の普通の中年男性で、いつも同じ古びた本を手にしていました。彼は穏やかな顔をしていて、私や他の司書たちともよく話をしていましたが、私は彼に近づくことができませんでした。理由は、彼の近くにいると、奇妙な不安感と耐えがたい冷え込みを感じるからです。私には特に病気はないはずなのに、彼がいるときだけ、体が震えるような感覚に襲われました。
その感覚があまりにも強かったので、私は彼の接客を避けるようにしていました。周りの同僚たちは、彼が出す独特のオーラでもあるのかねと笑っていましたが、私自身、この不思議な現象が理解できませんでした。
最後に彼と話したのは、ひんやりとした冬の夕方でした。シフトに入って本棚の整理をしていると、ふと振り返ったとき、彼が目の前に立っていました。私は冷たい空気と戦いながら、彼に挨拶をしました。すると彼は言いました。「ごめんね、僕の存在が君を寒くさせているのかもしれない。」その言葉に驚き、どうして彼がそんなことを知っているのかと尋ねようとした瞬間、彼は「もうすぐここを離れるから、心配しないで。」と、少し寂しそうな顔で言ったのです。
私はそのまま彼を見送ることしかできませんでした。次のシフトに入ったとき、同僚から彼が亡くなったという話を聞きました。なんでも、彼はあの日の帰り道で心臓発作を起こして、命を落としたということでした。
その瞬間、私の体が凍りつきました。彼が私に言った「もうすぐいなくなる」という言葉を思い出し、動揺が隠せませんでした。あの時、彼はまるで自分の運命を知っていたかのように思えました。それ以降、誰かに近づくと冷え込みがすることはなくなりましたが、あの不安感の正体が気になって仕方がありません。あの常連さんの死と私の冷たさには、何か関係があったのでしょうか。そう考えると、ぞっとします。
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