
さっき、9月の「掲示板の写真の泥死体」を書き込んだ大学1年の俺だ。
今回は、文化祭の準備で校内が妙に騒がしかった、10月下旬の秋の放課後の話をさせてほしい。
その日は文化祭の前夜で、どの部活も遅くまで残って準備をしていた。俺も陸上部の仕事を終え、すっかり日が落ちて寒くなった頃に帰路についたんだが、部室の鍵を体育館のステージ裏に忘れてきたことに気づいた。
すでに一般生徒の姿はなく、静まり返った巨大な体育館の重い扉を押し開けて、一人で薄暗い中へと入っていったんだ。
今回は、見えない影のダンスに心臓を乗っ取られかけた、高2の10月の怪談をここに詳しく吐き出させてほしい。
誰もいないはずの体育館。
ステージの分厚い幕の裏へ向かって床を歩いている時だった。
コツ、コツ、コツ……。
突然、ステージの幕の向こうから、軽快な靴音が響いてきた。
驚いて足を止めると、体育館のワックスの効いた床に、照明も当たっていないのに、巨大な「踊る人間の影」がいくつもぐにゃぐにゃと映し出された。
その靴音は徐々に激しくなり、まるで目に見えない大勢の人間が、ステージの上で狂ったようにステップを踏んでいるかのような音へと変わっていく。
中に入っちゃダメだ、そう本能が告げた瞬間、俺の身体が硬直した。
ト、ト、トン、と幕の裏のステップが一段と高くなった瞬間、信じられないことに、俺の右足が自分の意志とは完全に無関係に、カツンと床を踏み鳴らして勝手に動き出したんだ。
強制的に奴らのダンスのステップを踏まされるように、俺の足が勝手にリズムを刻み始める。
それと同時に、心臓の鼓動がその足音のリズムと完全に同調し始め、胸が激しく締め付けられた。
高1からの地獄の経験で、脳裏に最悪のルールが弾け飛んだ。
この見えないダンスの足音と、【自分の足音(リズム)を絶対にシンクロさせてはいけない(完璧に重ねてはいけない)】。
もし奴らの刻むテンポに自分の足音が完全に重なってしまえば、心臓の鼓動を奴らに完全に乗っ取られ、そのまま息が絶え、影のダンスの輪に強制的に取り込まれて死ぬ。
生き延びる唯一の方法は、陸上部で培った正確なリズム感を逆手に取り、【あえて相手のリズムの『裏拍』を狙って、自分の左足だけで体育館の床を思い切り激しく踏み鳴らし、ダンスの曲を物理的に狂わせる】ことだけだった。
「くそっ……、動け、俺の左足……ッ!!」
幕の裏の靴音が「ドン、ドン、ドン」と規則正しく迫る。
後日談:
- 俺はステージ裏の鍵を掴み取ると、体育館の扉を飛び出して、全速力で家に逃げ帰った。 翌日の文化祭本番、体育館のステージは大盛況だったが、夕暮れの床に映ったあの巨大な影のステップのことなんて、誰も知るはずがなかった。 【噂すら誰も聞いたことがない、生徒の身体を操って死のダンスへ引きずり込む未知の呪い】だった。 だけど、あれは絶対にただの疲労による幻覚なんかじゃない。 なぜなら、あの怪談があってから大学1年になった今でも、俺は【日常で手拍子やドラムの規則正しいリズム音が聞こえてくるだけで、あの体育館のステップがフラッシュバックし、自分の足が勝手に動き出しそうな強烈な恐怖に襲われて心臓がバクバクと暴れ出す】んだ。 特に秋の10月になると、静かな場所で自分の足音が響くだけであの裏拍の緊迫感が蘇り、全身の毛穴が逆立つような悪寒が走る。 高2の秋、あの学校の怪談は、賑やかな文化祭の裏側で、俺の肉体そのものを乗っ取るための怪談が待っていた。 次は、11月だ。
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