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中編

廃精神病院の噂

つなか 2020年11月12日
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私が以前住んでいた地域には、7年ほど前に廃病院となった精神病院があった。 近所では有名な病院で、毎年夜中に抜け出した病人が、交通事故に巻き込まれることが多発したため、廃病院となったという。 施設は解体されることもなく、昼間でも不気味な雰囲気を醸し出しており、手入れも行われていない樹木が、病院全体を暗く覆っていた。 この病院にはこんな噂が流れていた。 廃病院となった今でも、当時の患者達が夜な夜な病院に集い、施設を歩き回るという。 とある夏の暑い夜のこと。 廃病院に行こうと切り出したN君とその仲間達は、心のどこかで噂が本当なのではないかと不安に駆られながらも、出かける支度をしていた。 N「なにビビってんだよw いざとなったらダッシュで逃げればいいだろ〜頭のおかしいおっさんどもが追いつけるわけねえんだからww」 4人とも身支度が終わり、N君が運転する車に乗り込んだ。歩いてでも行けない距離ではなかったが、「いざという時は早く逃げられるほうがいいだろw」となんだかんだビビっているN君の提案で車で行くことになった。 5分ほどで廃病院に到着したが、当然施設は封鎖されているため、路上に車を停めた。 仲間の1人が、 「もしなんかあったらすぐ出発できるように、車の鍵はかけないでおこうよ。」 と提案し、N君もそうすることにした。 4人は車から降りてそれぞれ懐中電灯を付けると、薄気味悪い病院の正面玄関へと向かった。 「でもどうやって入るよ。どっか入れそうなとこない?」 手分けして入れそうなところを探していると、N君が一階の渡り廊下の窓が開いていることに気付いた。 N「おーい!ここあいてんぞー!」 4人は窓から病院内へと入り込んだ。 施設内はかなりホコリっぽく、真っ暗で何も見えない。そして何か生臭い臭いが鼻をつく。4人とも既にかなりビビっていた。 長い渡り廊下を進んでいくと、階段が見えてきた。ここでN君がこんな提案をする。 N「2人ずつ分かれてそれぞれ上の階と地下、行ってみようぜ。もしなんかあったら車集合な」 ジャンケンで友人2人は地下へ、N君ともう1人は上の階へと進むことになった。 N君達が2階を探索していると、廊下の奥で3、4人の人影が見えた。 出たぁ!!と思って引き返そうとした時、彼らが話しかけてきた。 「おーい!おたくらも肝試し?」 ホッとため息が出る。どうやら肝試しに来ていた別のグループのようだ。 N「そうなんですよーー!ここ気味悪いですよね!」 彼らも近所から来たらしい。この時期なこともあって、他のグループと遭遇することだってあるか、とN君は納得していた。 6人で楽しく話したあと、またそれぞれ探索を続けることになった。 するとペアの仲間がこんなことを言い始めた。 「なぁN。さっきのやつらなんかちょっとおかしくね?なんでこんな暗いのにライト1つ持ってないんだよ。しかもぱっと見全員40代くらいのおっさんだったし…その年で肝試しなんかすんのか?」 彼の言っていることは的を射ていた。 そして同時に寒気が走った。 N「出よう。なんか起きる前に!」 地下で探索しているやつらも気になったが、とりあえず先に車へ戻ろうと早足で階段へと向かった。もう少しで階段という所で、地下を探索していた2人と出くわした。 2人は少し腑に落ちない感じだった。 「ちょっと聞いてくんね?地下は霊安室になっててかなりキモかったんだけど、霊安室の中に15人くらい人がいてさ。なんか肝試しに来た人達だったんだけど、よく見たらみんなおっさんなのw とりあえず探索済んだからここで待ってたんだよ」 N「15人!?肝試しにしては多くね??てか俺らも会ったんだよ。4人組のおっさん。ライトも持ってなかったら気味悪くて。」 そんな話をしていると物凄い量の足音が地下から響いた。走っているのか、それはどんどん階段に近づいていく。 4人は一目散に廊下へと走り窓から飛び出て、車へと向かった。 N「やべえよやべえよ!やっぱあいつら患者なんじゃねえの!!」 全員車に乗り込むと、Nは急いでエンジンをかけた。走り出した車内で、友人の1人が叫んだ。 「おいN!あいつら追ってきてんぞ!」 バックミラーをみたN君は驚愕した。 群れになって車へと向かい走ってくる数十人の人達。 かなりスピードを出して大通りへとでた後、息が整ってきた4人はゲラゲラと笑った。 「まじ怖かったわww噂ホントだったんだなw」 N「足音近づいてきた時は死ぬかと思ったわw」 「お前ら足早すぎwふざけんなwww」 「明日みんなに教えてやろうぜwんであいつらも行かせようww」 「明日はこねえよ」 え? 車内が唖然とした。 N君がフロアライトをつけると、後部座席の後ろに見知らぬ男達がギュウギュウに詰まっていた。

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