
池袋の大学に通う俺は、冬の寒さが厳しい夕方、地下鉄に乗っていた。混雑した車両に満員の人々が押し寄せ、俺はいつものように耐え忍ぶ日課に身を委ねていた。
しばらくすると、隣の車両に目をやると、ある中年の男性と目が合った。彼は短髪で、眼鏡をかけた無精髭の男だった。だが彼の顔には奇妙な満面の笑みが浮かんでいた。
その笑顔に一瞬、ぞっとした俺はすぐに視線を逸らした。彼の存在が不気味な印象を与えるのは、どこにでもいるような普通の顔立ちなのに、笑顔が異様に引き立っていたからだ。
数駅が過ぎ、再び彼の方を見てみると、まだ俺を見つめていた。俺は耐えられず、行き先の駅が近づくにつれて心拍数が上がっていくのを感じた。
目的地に近づいた頃、俺は人混みをかき分けてドアの近くに移動した。ドアが開くと、雪崩のように人々が流れ出ていく。
その流れの中で、俺はあの男がいた車両を振り返った。すると、衝撃的な光景が目に飛び込んできた。男は相変わらず俺を見つめていたが、なんと彼の首が180度回転していたのだ。
彼の背中に顔がある状態で、無表情で口を動かしている。何を言おうとしているのかは分からないが、ただ一つだけ分かったのは、彼が完全に異常であるということだった。
その瞬間、俺は思わず立ちすくみ、後ろから押されてしまった。男は次第に人の波に埋もれ、再び見えなくなり、電車はホームを発車していった。
俺はしばらくの間、駅のホームで立ち尽くし、あの男が本当に人間だったのか、そして何を伝えたかったのか考え続けていた。彼の視線は、今でも俺の背中に突き刺さるように感じていた。
あの地下鉄の中で、俺はもう二度と彼に会いたくないと心から願った。
何かが、俺を見ている気がしてならなかった。
人間の姿をしているはずの彼が、果たして本当に人間だったのだろうか。
その疑問が、俺の心に深く刻み込まれた。
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