
中編
変な看板
匿名 2025年5月27日
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夏の日だった。
小学三年生の当時、仲の良かった親友木村君と、そのまた木村君の親友、田所君で遊んでいたのを覚えている。
木村君の親友とは、最初は気まづかったものの、1週間も経たないうちに打ち解けて休日に遊ぶような仲になった。
俺と、木村君、田所君は3人で遊ぶようになり、木村は本を読んでいるタイプだったのだが、田所君と俺は虫取りやゲームをする様になってから(今思えばお互い気まづくて、とりあえず外で遊ぼうとしてたんだと思う)、吊られるようにして一緒に外で遊ぶようになった。
まあ経緯はこれくらいにしておいて…。
最初はぎこちなかった3人も今では大分慣れてきた頃、木村が「あの廃墟行ってみないか?」と言う。
どうやらネットで調べたら、幽霊が出る団地(廃墟)があったらしい。
田所は「良いやん!」とだけ。
俺はまあ、幽霊なんか信じてなかったから適当に賛同した。そこまで否定しなかったのは、廃墟とか幽霊と言うだけで男心を擽るものがあったから。
その日は金曜日だったので、土曜日に行こうという事になった。隣町の使われてない団地、アパート?だったのかはちょっと忘れたんだけど、自転車で10分程度で着いた。
その一体は団地で誰も住んでいない。草が生い茂っていて、まあでも正直晴天の青空で雰囲気とかはなかった。ガッカリしながらも、廃墟というだけで少しテンションが上がっていた俺達は冒険を進めた。
団地の中に幾つも部屋(ドア)があって、玄関を土足で上がって行く。
そこに入る前に「立ち入り禁止」とかの張り紙がしてあったけど、それを潜り抜けて行った。他にも妙な場所に椅子とかあったから退けて入ってった。
今思えば結構法的にどうなの?という事だけど、今は取り壊されてるから時効ってことで。
部屋の中には、棚が有ったり家具が置いてある。普通引越しなら荷物全部持っていく筈なのに、何故かマットも食器もそのままだった。なんなら、今まで食べかけの食器とかパスタが机の上にあった。
まるで今までゆっくりしてたのに、今さっき急いで家具も荷物も置いて逃げたって感じだった。
「これ、やばくね?」
全員がそう思ったんで、転がるように戻って、自転車に跨って帰るんだけど、全然帰れない。ていうのは、ずっと走っても景色が変わらない。みんな焦り出した。
みんな気付いたんだけど、ある1箇所をずっとループしているっぽくて、それはこの団地のすぐ曲がった所に変な看板(この先工事〜(読めないけど何かの字。漢字?)って書いてある)があって、どうやら俺達の来た場所は本来入っちゃ行けなかったらしい。
その変な看板を通ると、いつの間にかそこに行く前の団地からすぐ出た道に戻ってしまう。
俺はもう訳が分からなくて半泣き状態。そして吊られるように2人も半泣きで自転車を漕いでた。
段々霧がかって来て、空も暗くなって来た。
その暗くなったって言うのはなんか、天気じゃなくて水泳のゴーグルをつけたら視界の色が変わるみたいな、視界の感覚が変わる感じ。暑くはなくてちょっと寒くなり始めるんだけど、もう訳が分からんのよ。
「木村がネットで調べたんだろう?だから全部教えろよ」そう聞いた。
「いや、見たんだけど怖いレベルがレベル5(レベル5が最大)で、誰もレビュー無い」
と言う訳よ。
あーもう終わったと思ってた時にもう我慢できな買ったのか急に田所君がハンドル(ブレーキ)を握って急停車。それで大声で泣き始める。
真後ろで走っていた俺はブレーキかけ損ねて田所の方へ衝突した。木村は腰を抜かして自転車のバランスを崩して閉まった。
まあ、そしたら振り返ると後ろにループ起点の変な看板が、見えた。幸い何故か怪我はしてなくて自転車だけが盛大に破損してた。特に木村のは自転車のバランス崩してたから半壊して買い換える事に。当時はこっぴどく叱られたし、意味わからんしで中学校卒業するまでは誰にも話さなかった。
次の日、俺だけで行ってみたんだけど、看板には工事中とだけ。空が暗くなるとか寒くなるとかは無かった。今では笑い話になってる。ただ木村は20歳の事に事故で亡くなったんで田所と2人だけど。
結局木村から教えて貰った、廃墟を紹介してくれたURLは閉鎖されてた。
とりあえず、去年工事が始まったからその時は誰もループしないように入らないように立ち入り禁止の看板とか立てた。田所は妙に積極的だった。
でもおかしいんだよな。あの時、工事中って看板あったけど、当時工事する計画も無かったらしい。
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