
長編
滝の人
匿名 2016年9月12日
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これは僕が高校を卒業してすぐ、家族である県のN市に観光へ行った時に体験した話しです。
初投稿なので読みづらく、さほど怖い話ではないですが暇があれば読んでみてください。
その日は朝早くから家族でT県へ旅行に行くため、皆早く起きて着いたら何をしよう、どこを観光しようと両親も年甲斐もなくはしゃいでいました。
両親が高所恐怖症のため、移動は新幹線や在来線を使用しての移動で、T県に到着するまでにはとても時間がかかりましたが、移動中も様々な県の景色を見ることが出来たのでそれ程苦にはならなかったように記憶しています。
予約しておいたN市の旅館についた時にはすっかり日は落ち、辺りは暗くなっていました。
その旅館はとても古く、旅館と言うよりは民宿に近いような感じで
両親は「趣きがあってええなぁ!」等と言っていましたが、私には入る前から何か嫌な感じがしていました…
今思えば、その時からすでにあれは始まっていたのかも知れません。
その日は移動で疲れていたこともあり露天風呂に入って料理を(とても豪華で美味しかった)食べた後、私はお酒を楽しむ両親を尻目に先に布団を敷き、眠ってしまいました。
その夜、夢を見ました。
私は自分の記憶に無い、とても大きな滝を見ていました。
落差100mはあろうかと言うとても大きな滝です。
気が付くと滝の1番上の崖に、女性でしょうか…黒い服を着た人が立っているのが見え、滝つぼ周辺からは無数の白い手が突き出していて、女性を手招きしているように見えました。次の瞬間その滝に飲まれるかのようにその人は落ちていきました。
何ないけないものを見てしまったと思ったところで目が覚めました。
その日はあいにくの雨模様でしたが両親は気にも留めずにそそくさと出発の準備をして、少し起きるのが遅かった私もいそいで支度をしました。
旅館をでて昼食をとる時には夢の事など忘れていました。
「次は今回の旅行で1番の目的地だぞ!」
歩きやすい山道を登りながら親父が言います。
この山奥にどんな観光スポットがあるのだろうかと私もワクワクしながら登りました。
1時間程でしょうか、山道を登っていると不意に視界が開けました。
滝です。
とても大きな。
落差100mはありそうな滝です。
「おぉ~!」
「綺麗ね~!」
横からは両親の感動する声が聞こえます。
確かに、普通ならばそれは感動にあたいする程素晴らしい景色なのです。
夢で…見た…?
考えるよりも先に結論が出ました。
その滝はまさに私が夢でみたあの滝と同じものでした。
そう思った瞬間、全身鳥肌が立ち、物凄い吐き気に襲われました。
ここはヤバい
これ以上は危ない
本能が警鐘を鳴らします。
そんな私を気にもしないで両親は整備された山道を歩いていきます。
私だけ引き返すわけにもいかず、渋々両親の後を追いました。
ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい
帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい
そんな私のに気付く事もなく両親は滝の周囲の山道を滝を眺めながら歩いていきます。
私は滝を直視する事が出来ませんでした。
山道が途切れたかと思えば、そこは広場のようになっていて、ロープウェイ乗り場があります。
私は早くそれに乗り、下山したいのですが両親は写真を撮ろうと言います。
見るのも嫌な滝の写真など撮りたくも無いですが、せっかくの家族旅行、両親を不快な気持ちにさせまいと私も写真に映りました。
写真を撮り終えたあと、ようやく下山する事ができました。
まだ寒い時季にもかかわらず、私はびっしょりと汗をかいていました。
それから旅行を終え、ようやく帰宅出来た私は旅行初日のようにすぐに眠ってしまいました。
また夢を見ました。
またあの滝のです。
あの女性はいません…
しかしふと滝つぼの所に目をやると、あの女性が着ていた黒い服が滝に揉まれながら流れていきました。
ハッと目を覚ますと滝に行った時のようにびっしょりと汗をかいていました。
後日、旅行の写真が現像されたので取りに行きました(その当時デジカメを持っていない)
どの写真も両親は笑顔で私も思わず笑顔になりました。
何枚かめくると出てきました。
あの滝の写真です。
見るな
本能では分かっていました。
しかし私はそれを見てしまいました。
その写真は滝全体を背景に家族全員で写ったものです。
私だけが顔を強ばらせて写っています。
そして滝の1番上には
夢に出てきたあの女性が写っていました。
後で知った話しなのですが、あの滝は年に何人も遺体があがる自殺スポットで、加えて私たちが滝に行ったあの日、その滝に入水自殺した女性がいるそうです。
不思議な事にその人の着ていた黒い服は見つかったのですが、ご遺体は見つからなかったそうです。
あの写真は彼女が死ぬ直前に写ったものなのでしょうか。
私の見た夢はなんだったのでしょうか。
そして、彼女はまだあの滝つぼの下にいるのでしょうか。
私にそれを知る手段はありません。
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