
長編
廃墟にて
匿名 2018年8月30日
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10年前、私が20の頃に体験した話です。
その頃、会社の先輩とオカルトクラブとかふざけた名前をつけて夜な夜な心霊スポットなどに言っていました。
クラブと言っても二人だけですが。。
ある日、県内の心霊スポットに行きつくし、ただただドライブをしていたのですが、先輩から
先輩「俺たちが心霊スポット探そうぜ」
と言われノリノリで人気のない山道や、側道に入り心霊スポットを探していました。
そんな探索をしだして2週間目に
F県K市の山沿いの町に廃墟の一軒家を見つけました。と言っても300m先にはファミリマートがあり、人気が全くない訳ではありません。しかし、心霊スポットに飢えていた私達はファミリマートに車を止め廃墟に向かいました。
深夜の一時半くらいだったでしょうか、台風が近づいており風は少しだけ強く、外は先程降った雨でじっとりとしていました。
廃墟の前には15段ほどの石が積み上げられた階段があり、上に上がると玄関前になります。
家の隣にはボロボロの木造の牛舎があり携帯のライトで照らすと腐った木や、蜘蛛の巣から牛舎には入れそうにありませんでした。
牛舎は諦め、メインの廃墟一軒家へ。
廃墟は牛舎のようにボロボロではなく、まだ人が住めそうな雰囲気でしたが、玄関の扉には板や釘が打たれており、入れる状態ではありませんでした。
雨に濡れてもわっとした草の匂いの中どこか入れる場所は?と探すと廃墟と牛舎の間の隙間、人が一人入れる通路?を歩くと廃墟の壁が崩れ、一軒家の中に入れるようになっていました。
私は先輩と廃墟の壁のコケに触れないよう進み中へ入りました。
先輩、私の順に壊れた壁から入るとそこはお風呂場でした。
少し前のお風呂なのか、小さなタイルがびっしりと敷かれ、風呂釜もタイルで囲われていました。
トトロに出てくるメイとさつきの家のような風呂でした。
風呂釜には蓋がされていましたが、蓋と風呂釜の隙間からモッサリと人の髪の毛??と思えるような草のような髪のようなものが20センチほどはみ出ていました。
見た瞬間、鳥肌と背中をスーっと風が流れた気がしました。
先輩もそれを感じたのか、開けるか?なんて話してましたが、流石に怖すぎて開けることはできませんでした。
しかし、ここで帰るわけにもいかず中へ。。
中に入ると、六畳ほどの部屋が連なっていました。そこには、古びたカレンダーや、新聞が壁に貼られ壁の上部には鬼とおたふくのお面が飾られていました。
風呂場の恐怖を忘れ散策、人間の生活がいきなり途切れたような感じで、風呂場の壁、牛舎のようにボロボロとは感じませんでした。しかし、イヤな空気はまだ先輩と私を包んでいました。
部屋の突き当たりに廊下があり、埃っぽい廊下を進むと
横にある窓がガタガタと風で揺れ、外を見るとポツポツと雨が降り出しました。
先輩と雨が強くなってきてるから、早めに切り上げようとなり、
最後に廊下の中腹に見つけた階段を登り二階に行くことにしました。
階段は
きぃ‥
きぃ‥
と軋み、イヤな空気をより一層強めました。
二階には扉は一つしかなく先輩と中に入りました。
外は雨が降り始めたのですが部屋の中は、なぜかカラッとした空気で、埃の匂いがしました。中は四畳半くらいの和室。
真ん中に四角いちゃぶ台が置いてありました。特に変わったところもなく
先輩となんもないなって話していると。
きぃ‥
きぃ‥
と、私たちが登ってきた階段からさっき自分たちが聞いた軋む音が聞こえました。
先輩と目を合わせましたが、なぜか強がり違う話をして気を紛らわせる二人がいました。
きぃ‥
きぃ‥きぃ‥
明らかに登ってきてます。
なんの関係もない話を先輩は繰り返し、恐怖をかき消していました。私は膝が震え、返事をすることしかできません。
きぃ‥
きぃ‥
逃げたいっ!窓から飛び降りるようか。。
いや、家はただでさえ階段を登った場所。
二階から飛び降りれば大怪我になる。
でも、逃げ道は、登ってきた階段しかない。。と頭が焦りと恐怖でいっぱいになりました。
そして、先輩も黙り込みました。多分同じこと考えていたと思います。
きぃ‥
きぃ‥
もうすぐこの部屋に来る。
私が思った瞬間
わっー!!!!
先輩は、音のする階段に駆け出しました!
私もつられて後を追いかけ階段を転げるようにおりました。
階段には誰もいませんでした。しかし走り出したら開放され止まりません。
先輩の声のする方に向かってただ走りました。階段をぬけ、六畳の連なった和室をぬけ、風呂場の崩れた壁へ!!
もうすぐ出れると少し気持ちが緩んだ時に
私は見てしまいました。
風呂釜の蓋が半分以上開いており、はじめに見たの髪の毛らしきものがありません。。
私は、声を上げて走りました!!
体を牛舎と廃墟の壁に擦り付け、階段を駆け下り、先輩の後を追ってファミリマートの駐車場へ。
ゼェゼェと二人で肩を上下させ座り込みました。
10分くらい黙り込んで、呼吸が落ち着いた頃、先輩がタバコに火をつけました。
先輩「見たか?」
私「風呂釜っすよね?」
先輩「あれ、風呂釜から誰か出てきとるばい」
私「と、とりあえず、もう帰りましょう」
お互いタバコを吸って、いつもノリノリの車内はどんよりしており、シトシトした雨の中、恐怖体験を忘れられず帰宅しました。
そして、次の週に地元の友人にこの話をすると、地元で一番のお調子乗りが
「いーじゃん!いこー!いこ!」
と言い出し、友人4人とそいつの彼女とまた廃墟へ。
私「俺はむり。車で待っとくけん、みんなでいってき」
とファミリマートでそいつの彼女と待っていました。
場所と風呂場の入り道を教え、タバコを吸いながらみんなの背中を見ていました。
すると、、20分くらいしてお調子乗りから電話がかかってきました。
「お前が言いよる崩れとる壁とかないばい。嘘ついとろう?」
私は耳を疑いました。お調子乗りはファミリマートに戻り私を嘘つき呼ばわり。
周りの友人も期待はずれの顔でした。私は馬鹿にされたのが悔しく
そして、あまりに信じられず、もう一度あの廃墟に向かいました。
廃墟と牛舎の間を歩くと、壁が崩れている箇所は一つもありませんでした。
なんで!?と思いましたが結局、入る場所はなく、私は嘘つき扱いです。
しかし、帰り際に廃墟の壁を見ると
所々私の肩の高さのコケが削りとられていました。
私はその瞬間、スッーとした風を背中に感じました。
私はそのあと友人たちに謝り、帰路につきました。
先輩にそのことを話すとオカルトクラブとか、ふざけるのやめよう。ちょっとヤバイ気がするとなり、その後は先輩とも疎遠になり、この話をすることもなくなりました。
それから結婚し、嫁とドライブ中に一度だけ廃墟前の道を通るとそこにはまだ廃墟は存在していました。
またあの恐怖を思い出すと背中から寒気が走ります。
あの髪の毛の正体はなんだったのか。。
真相は誰にもわかりません。
後日談:
- 実体験です。
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