
先週の金曜日、同僚の山田から突如電話がかかってきた。
彼が新しく借りたオフィスビルの一室に遊びに来ないか、という誘いだった。
大学時代以来の再会で、もう十年以上の付き合いになる。
その日は冬の寒い夕方、指定されたビルへ向かう。
ビルは市内のビジネス街に立つ、洗練されたデザインの高層ビルだった。
エレベーターで最上階へ上がり、彼のオフィスの前に立つ。ドアを開けると、まるでアートギャラリーのような空間が広がっていた。壁には幻想的な絵画が飾られ、明かりは柔らかく照らされていた。山田がにこやかに迎えてくれ、ソファに腰を下ろすと、しばらくの間、懐かしい思い出話に花を咲かせた。
「それで、ここはどうやって借りたの?」
コーヒーを飲んでいた山田は、少し笑いながら答えた。「実はこのビル、事故物件なんだ。知ってるか?」
「事故物件って?」
「この部屋の前に住んでいた女性が、ある日突然行方不明になってしまったらしい。周りの住人は、彼女の部屋から奇妙な音を聞いたり、不気味な絵画が描かれているのを見つけたりしたんだ。」
彼は立ち上がると、部屋の奥へ向かって歩き出した。俺も遅れてついていく。
部屋の隅には、奇妙な絵画が掛かっていた。それは、女性が無数の影と一緒に描かれているものだった。
「この絵は、彼女が描いたものだと言われている。彼女が失踪した後も、絵はずっとここに残っているんだ。」
俺はその絵をじっと見つめた。すると、なぜかその絵から目が離せなくなってしまった。絵の中の女性の目が、まるでこちらを見ているかのように感じた。
「その後、数人の人がこの部屋に住んでみたけど、皆すぐに引っ越してしまったんだ。何かがいるような気配を感じるから。」
山田は静かに言った。
俺は少し不安になり、思わず絵を見つめ続けた。すると、突然、絵の中の女性が微笑んでいるように感じた。その瞬間、背筋が凍りついた。
「彼女は、ずっとこの場所にいるのかもしれない。」
「お前、怖くないのか?」
「最初はな、でもこの絵を見ていると、なんだか彼女のことが気になって仕方ないんだ。」
山田は絵に向かって語りかけるように言った。「俺もこの場所に住んで、彼女と一緒に過ごしてみたいと思っている。」
すると、絵の中の女性が一瞬、実際に動いたように見えた。俺は思わず目を逸らした。山田はまだその絵に見入っていたが、その顔には何か決意めいた表情が浮かんでいた。
後日談:
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