
さっき、10月の「体育館の見えないダンスステップ」を書き込んだ大学1年の俺だ。
今回は、冬の冷たい風が校舎を吹き抜けていた、11月下旬の寂しい放課後の話をさせてほしい。
その日は部活の前に猛烈にお腹が空いて、購買部でパンでも買おうと、旧校舎の隅にある薄暗い購買部前へと向かった。
だが、すでに時間は遅く、購買部は厚い灰色のシャッターが完全に下りて閉まっていた。
あきらめて引き返そうとした、その時のことだったんだ。
今回は、シャッターの隙間から俺を肉ごとすり潰そうとした、高2の11月の怪談をここに詳しく吐き出させてほしい。
静まり返った購買部の前で足を止めた時だった。
ガサゴソ、ガサゴソ……と、閉まったシャッターの向こう側から、何かが床を這うような嫌な音が聞こえてきた。
何だ、と思って見つめていると、閉まったシャッターのわずか数センチの下の隙間から、ニュッと【爪がすべて剥がれ落ちて血に染まった、異常に真っ白な人間の手】が伸びてきたんだ。
その手は上を向いて開かれており、手のひらの上には、小銭の代わりに「人間の歯」や「剥がされた爪」がジャラジャラと乗せられていた。
そいつはカチカチと不気味な音を立てながら、俺にお釣りを受け取らせようと手招きをしてくる。
ヒッ、と息を呑んだ瞬間、俺の制服のポケットの中で、自分の財布の中の小銭が「ジャラジャラジャラッ!」と異常な勢いで勝手に鳴り出した。
同時に、目に見えない強大な力で背中を押されるように、俺の身体がシャッターの隙間へと強引に吸い寄せられ始めた。
高1からの地獄の経験で、脳裏に最悪のルールが弾け飛んだ。
あの白い手が差し出してくる「歯や爪のお釣り」を、【絶対に受け取ってはいけない(触れるのもNG)】。
もし身体が引き寄せられるままにお釣りを受け取ってしまえば、取引が成立したとみなされ、そのままシャッターのわずか数センチの隙間へ、肉と骨をボキボキにすり潰されながら中に引きずり込まれて即死する。
生き延びる唯一の方法は、強制的に前へ進まされる足に抗いながら、【自分のポケットや財布から『本物の硬貨』を一枚引っ張り出し、あの白い手のひらに力任せに叩きつけて『買い物の代金だ!』と大声で叫ぶ】ことだけだった。
「う、動くな……っ!」
シャッターはもう目の前だ。
あと一歩進めば、あの血まみれの指先が俺の靴に触れる。
後日談:
- 俺は四つん這いのまま購買部から離れ、そのまま一目散に家に逃げ帰った。 翌日の昼休み、普通に営業している購買部へ行き、シャッターの下の隙間を覗き込んだが、血の跡も人間の歯も、何一つ落ちていなかった。 【噂すら誰も聞いたことがない、閉じた空間から命の代金を請求してくる未知の呪い】だった。 だけど、あれは絶対にただの空腹による幻聴なんかじゃない。 なぜなら、あの怪談があってから大学1年になった今でも、俺は【お店や自動販売機でお釣りを受け取る瞬間や、財布の中で小銭がジャラジャラと擦れ合う音を聞くだけで、あの剥がれた爪の白い手がフラッシュバックし、自分の身体がどこか狭い隙間に吸い込まれそうな強烈な圧迫感に襲われて息ができなくなる】んだ。 特に冬が近づく11月になると、あの日叩きつけた硬貨の冷たい感触が右手のひらに鮮明に蘇り、激しい動悸が止まらなくなる。 高2の冬、あの学校の土地は、何気ない買い物の空間さえも、俺の肉体をすり潰すための処刑場へと変えた。 次は、12月だ。
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