
母子家庭の私たちのマンションでは、母がクリスマスの夜に特別なぬいぐるみを使って、兄と一緒に楽しむ恒例行事がありました。
カラフルなフェルト生地で作られたそのぬいぐるみは、正直なところ全く怖くなく、私と中学生の兄は、ちょっとしたサプライズとしてこのイベントを心待ちにしていました。
「母さん、まだ来ないの?」
「ねー、どうしたんだろう?」
母は一度外に出て、エレベーターから戻ってくることになっています。
待ちきれずに小声で話し合っていると、玄関のドアが開き、重い足音が近づいてきました。
「お菓子がもらえるぞー!」
兄は大はしゃぎし、用意していたお菓子を手に取りました。私も手を伸ばそうとした瞬間、言葉にできない違和感が体を走りました。
ドアを入ってきた母の服装が、数時間前と明らかに違っていたのです。
よく見ると、髪型や体格も微妙に異なり、瞬時に兄の腕を引っ張って裏口へ逃げました。
「母のふりをした誰かがいるの、助けて!」
裸足で階段を駆け下りながら、隣の部屋へ飛び込むと、すぐに通報され、警察が来ることになりました。
後に急行した警察が、廊下で倒れている母を見つけました。
「見知らぬ男に襲われて、気が付いたらぬいぐるみを奪われていた」と。
警察が到着した時には、既にその男は逃げ去っていましたが……あの人は一体何者だったのだろう……。
その夜、私たちのクリスマスは永遠に変わってしまった。
あの楽しかったイベントは、今や恐怖の記憶に変わってしまったのだ。
そして、ぬいぐるみの背後には、いまだに謎が潜んでいる。
何が起きたのか、私たちにはわからない。
ただ、あのぬいぐるみが静かに私たちを見つめ続けている。
それは、今でも私たちの心に影を落としている。
「母は、どこにいるの?」
その問いかけは、私の中で繰り返される。
答えが見つからないまま、私はただ待ち続ける。
何かが、また起こるのを。
後日談:
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