
長編
呪地蔵
まなみ 3日前
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「H先輩?違うよ、死んだのは、Y先輩だ……」
「はあ?」
思考が一瞬停止した。
首を振って頭の中のモヤをかき消す。
「ふざけんな!なんでY先輩なんだよ?あの人は何もしてないだろ!?」
そう、あの時Y先輩は、H先輩の蛮行を逆に戒めたのだ。地蔵の頭を御堂の中に戻し、手まで合わせた。
もし本当に呪いがあるのなら、なぜそんなY先輩が呪いで死ぬ事になる?言っちゃ悪いが、もし呪いで死ぬのなら、それはH先輩の方だろう。
「俺な、H先輩から全部聞いたんだ。あの時起こった事」
「あの時の?」
Aの言葉に俺は聞き返した。すると、Aは重い口を開くようにぽつりぽつりと、H先輩から聞いたという話を、俺に聞かせてくれた。
Aの話によると、あの時、H先輩が御堂の中で見たものは、頭が逆を向いていた地蔵だったらしい。
正確に言うと、頭の取れた地蔵が、頭だけ後ろを向くようにして地蔵の体の上に置かれていたというのだ。
つまり、H先輩は地蔵の頭をもぎ取ったのではなく、予めもぎ取られ、なぜか後ろを向くようにして置かれた地蔵の頭を、手に取っただけだったのだ。
そしてそれを見ていたY先輩が、地蔵の頭を元に戻し、手を合わせたというのだ。
そして、Y先輩はその一週間後、自宅のドアノブにタオルを引っ掛けそこで首を吊っていた。
第一発見者のアパートの管理人さんによると、首を吊っていた先輩の姿は、なぜか手を合わせ合掌のポーズを取ったままの姿だったらしい。
なぜ、なぜY先輩だったのか?その疑問に、Aはこう答えた。
「H先輩、この前言ってたんだ。あの時、御堂にはしめ縄がされてた。それって、誰にもあれを見せたくなかったからじゃないかって。自分があの地蔵の頭を手に取った時も、Y先輩が地蔵の頭を御堂に戻した時も、H先輩、一度も地蔵の顔、見てないんだって。あれ……本当は顔見て拝んじゃいけなかったんじゃないか?」
最後まで話してくれたAに俺はH先輩は今どうしているのかと尋ねた。
「H先輩、確かめて来るって言ってた。けど、その日以来H先輩と連絡が取れないんだ。気になってあの地蔵の所にも行ってみたんだけど、御堂も、あの地蔵もどこにもなかった。」
これが、Aから聞いた、事の顛末の全てだ。
H先輩は一体どこに消えてしまったのか、あの地蔵は何だったのか、そしてこれが最も重要な事だ。
あの地蔵は今も、どこかで誰かが拝みに来るのを、待っているのだろう
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- お地蔵は普通に怖いなぁ。実際に見たことってあんまないし…(´゚ω゚`)バターオイル
- 面白ければどっちでもいいARuFa
- 俺の親戚の叔父さん、じ〇つして一ヶ月ぐらいしてからし〇だって聞かされたよ?家族が世間体気にして密葬する場合もあるからな。ろん
- Y先輩が亡くなったのは地蔵を見に行って一週間後。その一週間の間に大学を中退したのだとしたら急すぎるし、仮にスグに中退したとしても、Y 先輩の訃報を知らなかったというのも不自然すぎる。惜しい。匿名
- 扉開けて数年も立ってたら、さすがに移動撤去されるんじゃない?絵巻
- 御堂と地蔵が消えたってとこから急に松っぽさが…。そこまでは面白かった。(´・д・)