
長編
長く住めない家
らら 2017年9月1日
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数年前、ある港町に住んでいた時の話です。
長文駄文ですが、読んでみてください。
高校2年生の春に祖母が亡くなり、祖母と二人で暮らしていた祖父と一緒に住むことになりました。
私は祖母が大好きで、学校が休みの時は良く泊まりに行っていて、祖母も私を本当に可愛がってくれました。
ですが、祖父は常にしかめっ面で、会話もほとんどしたことがなく、怖いイメージしかありませんでした。
そんな祖父と一緒に暮らすのかと最初は嫌でしたが、近くの港町にある2階建ての広い一軒家に引っ越すということが決まり、一人部屋までもらえるということで、嫌だった祖父との暮らしも悪くないかもと思ってきました。(兄弟が多かったので、今までは兄と弟と私は常に同じ部屋だったので、一人部屋は本当に嬉しかった)
引っ越しをしてみると、本当に大きな家で、1階に居間と部屋2つ、2階には部屋が4つあり、2階には台所もついていました。
住み分けとしては、1階に祖父で2階に私たち家族が住むということになりました。途中で叔父も一緒に住むと言い出したので、祖父、叔父が1階、私たちの家族(7人家族)は2階9人での生活が始まりました。
遊び盛りだった私ですが、初めての一人部屋だったために最初の1か月くらいは学校が終わるとすぐに家に帰り、どんな部屋にしようか考え、ちょくちょく模様替えをしながら充実した一人部屋ライフを楽しんでいました。
しばらくすると友達がちょくちょく遊びに来るようになって、海が近いということもあって、よく夜の海に遊びに行ったり、早朝に家を抜け出して朝日を見に行ったり、街灯があまりない港町だったので、肝試しということで町を散策したりしました。
異変が起こり始めたのは住んでから3か月くらいしてからでした。
夕方の6時頃、部屋で携帯をいじりながら寝転がっていると、かすかに音が聞こえてきたのです。
耳を澄ませて良く聞いてみると、「ぐぉ~、ぐぉ~」と誰かがいびきをかいている音でした。
私は「きっと誰か寝てるんだな、早いな」という風に思ってまた携帯をいじり始めました。
しばらくすると、お腹がすいてきたので、1階の居間にご飯を食べに行きました。
居間では叔父と弟以外の全員がテーブルを囲み、ご飯を食べていました。
叔父と弟がいないのに気付いた私は、寝ているのは叔父か弟なんだなと思い、ご飯を食べ始めました。
すると「ただいま~」と誰か帰ってくる声が聞こえました。声の主は叔父で、買い物にいっていたそうです。
じゃぁ寝てるのは弟なんだなと思い、母に「弟起こさないで良いの?」と聞くと
「今日は友達の家に行ってるから家にいないわよ?」と言われました。
「じゃぁさっきまで誰か寝てた?」と聞くと、誰も寝ていないと言われました。
ご飯を食べ、自分の部屋に戻ると、まだいびきが聞こえるし、心なしか若干生臭い臭いもしています。
怖くなった私は部屋を出て居間にいる皆に「部屋にいると誰かのいびきが聞こえるし、変な臭いがする」と話し
父親と母親に部屋までついてきてもらいました。
部屋に入ると、先ほどより臭いがきつくなっていて、いびきも大きくなっています。
しかし父親も母親も「なにも聞こえないし、別に変な臭いもしないぞ?」と言って部屋を出ていきました。
父親にも母親にもこのいびきは聞こえないし、臭いもしないらしい。
私は怖くなって居間でテレビを見ながら寝るまでの時間を過ごしました。
寝る時間になって恐る恐る部屋のドアを開けると、先ほどまでの臭いも、いびきもなくなっていました。
不思議だなと思いながら、その日は寝ました。
このいびきと臭いは、1週間に3回くらい起きるようになり、最初に生臭いヘドロの様な臭いがしてくると、いびきが聞こえるということがわかりました。
最初は怖かったいびきもこの臭いにも慣れてきた私は、だんだん気にすることもなくなり
普通に部屋で生活することができるようになっていました。
引っ越してからもうすぐ半年か、と感じるころに次の異変が起きてきました。
この家に引っ越してきて4か月で、父親の仕事がうまくいかなくなってきたのです。
父親の職業は工芸家で、安定した収入はなくとも、一般家庭と同じかそれ以上の生活ができていたのですが
どうやらこの家に引っ越してからうまくいっていないと言います。
品物を下ろしていた会社との取引がうまくいかず、自分で販売している分も全然売れなくなっていたのです。
5か月目には収入がほぼ無いに等しいくらいになっていたのです。
そこからは地獄の様な日々でした。
お金がないので1日1食は当たり前、私、父親、母親がバイトしようにもどこに面接行っても落とされ、叔父はトラブルを起こし退職、兄貴は家を出ていき、収入は祖父の年金だけになりました。
お金が無くなると余裕がなくなり、家族間の喧嘩が絶えなくなり、ほぼ毎日集金に来るガス屋さん、電機屋さん、水道屋さん、大家さんから逃げるように居留守を使い、滞納は犯罪だ、生きてる価値ないと暴言を吐かれ、極めつけは、家族が全員出掛けていて、私と祖父が2人で家にいるときにガス屋さんが集金に来て、チャイムを連打され、祖父が私に「うるさいから早く出てなんとかしろ!」と怒り、ガス屋に今親がいないことを話すと近所に聞こえるような大声で犯罪者呼ばわりされ、もうガスを止めていくと言われ、それだけは勘弁してくださいと頭を下げているのに祖父はなにもしてくれなくて、助けを求めても「お前なんか孫だと思ったことはない!」と言われたことでした。もう完全に私の家族は終わりなんだと感じました。
半年が過ぎたころに父親の幼馴染が仕事を紹介してくれて、職場が遠いということで私たちはこの家を出ていくことになりました。引っ越し資金は父親の幼馴染が立て替えてくれました。私はこの家から離れることができて、本当に救われた気がしました。
引っ越しをするということで、私は学校をやめ、一緒に働くことになりました。
それからの生活は順調で、今では以前の生活と変わらなくなりました。
祖父や親戚とは疎遠になりましたが、それ以外は昔と変わりません。
落ちらしい落ちはないのですが、大人になって当時住んでいた家の条件を父親から聞いたので、書いておきます。
あれだけ大きかった家の家賃は3万円という破格の安さで、友人の紹介でその家を知ったそうです。
なにか『いわくつき』というのは知っていたそうですが、父親はそういうのを一切信じないタイプだったので、広いし家賃の安いあの家にしたそうです。
『いわくつき』と言っても、地縛霊が~とか金縛りが~とかではなく、その家は『長く住めない家』という話で、なんでも住んだ人は1年もそこには住めないというものでした。
現に私たち家族は半年しか住めませんでしたので、『長く住めない家』というのは本当だったようです。
最後に、少し胡散臭くなってしまいますが、先日、ある大手賃貸雑誌にあの家が乗っていた時に見た写真の話をします。
写真は家全体を写しているもので、ちょうど私の一人部屋の窓も映っていました。懐かしくて写真を見ていると、どうも黒い人影の様なものが写っていました。
「やっぱりあの部屋はやばかったんだ!」と思った私は、職場の同僚にその写真を見せました。すると・・・そこには黒い人影なんて写っていませんでした。
これは私の見間違いなんでしょうか、それとも私にだけ見えた『なにか』なんでしょうか。
全てあの家のせいにするわけではありませんが、これが私が体験した怖い話です。
今でもその家は良く借りに出されるらしく、長く住む人はいないそうです。
この怖い話はどうでしたか?
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