
中編
学生寮の足音
(゜Д゜) 2021年2月10日
chat_bubble 0
8,026 views
大学生の時、私は学生寮住まいでした。
田舎の三流大学に通っていたのですが、初めての一人暮らしということで安全性を考え寮に入りました。
部屋は個室で、入ってすぐ左手にキッチン、右手にトイレがあり、正面が四畳半程の縦長ワンルームで突き当りが窓という間取りです。
窓際にベッドを配置していました。
キッチンと部屋はカーテンで仕切ってありましたが、どうせ一人なので私はあまり閉めることはありませんでした。
お風呂と洗濯機は共同で、三階建て。
私の部屋は三階でした。
門限はありましたが田舎なので夜遊びに行く場所もなく不便はありませんでした。
そして寮内でも仲のいい友達ができ、毎晩のように集まってははしゃいでいました。
その日も仲良し4人組で集まって夜中にホラービデオ(当時はVHS)を観よう!ということになり、私が録画していたテレビ版『リング』(主演:高橋克典)を観ることにしました。
観たくて録画したのはいいけれど、一人では怖くて観れなかったのでこれ幸いと提案したのです。
各自風呂やら夕食やらもろもろを終え、10時頃友人の部屋に集まりました。
さあ!すぐ観よう!という流れにはならず、ダラダラおしゃべりをして、11時過ぎ頃にようやく観始めました。
みんな怖いからか喋りながらでしたが、部屋の電気を消していたのでなかなか雰囲気は出ていました。
結局観終わったのは日が変わった1時頃だったと思います。
部屋に戻って一人になるのは少し怖かったのですが、かなり強い睡魔も襲ってきていたのでそのまま解散となりました。
電気はついているものの、薄暗くひんやりとした廊下を通って部屋へ戻りました。
すぐに寝てしまいたかったので、とりあえずトイレを済ませるとそのままベッドにダイブしました。
部屋の電気は全部消して寝るので、扉の下の1㎝程の隙間から漏れる廊下からの微かな明かりがとても明るく感じられました。
すると
ヒタ ヒタ ヒタ ヒタ …
廊下を歩く音が聞こえてきます。
しばらくすると漏れ入る明かりに右から左へ影が横切りました。
少しビクッとなりましたが、他の寮生も誰かの部屋で遊んでたのかな~と、そのまま目を閉じました。
しかし、いつまでたっても部屋に入るわけでもなく、階段を下りるわけでもなく、ただ廊下をヒタヒタと往復しているようなのです…裸足で。
寮生は皆スリッパを履いて寮内を移動しています。
まあ、私のように面倒くさがりになるとちょっとした用事の時は裸足でサッと済ませますが。
それにしても真夜中にずっと裸足でただ歩き回るなんておかしい。
しばらくして気が付いたのですが、どうやらその足音の主は歩き回ってはピタリと止まり、また歩き回っては止まるを繰り返しているようなのです。
流石に怖くなり、扉が見えないようにキッチンと部屋を仕切るカーテンを閉めることにしました。
物音を立てないようにそ~っとカーテンを引き始めたその時、足音が止まりました。
そして嫌な予感はしましたが、つい扉の下を見てしまったのです。
予感は的中。
私の部屋の前で影が止まっていました。
入り込んでいる明かりの真ん中だけ影が出来ています。
誰かが部屋の前に立っている……。
心臓がドックンドックンと体が震えるほどに大きく脈打つのが分かります。
扉に鍵はかけていましたが、息を殺して目を瞑り影が去るのを待つことにしました。
体感時間は長く感じましたが、おそらくほんの数秒程でまた『ヒタ ヒタ 』という足音が聞こえたので、今がチャンスだと思い目を開けて扉を見ました。
影はありません。
そしてカーテンを半分まで閉めた時…
ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ
ドアノブを乱暴に回す音が!
私は思い切りカーテンを閉め、ベッドへ戻ると布団を頭からかぶって丸くなりました。
「やめてやめてやめてやめてやめて…。」
こころの中でひたすら唱えます。
しばらくガチャガチャと音がしていましたが、やがてまた ヒタ ヒタ と廊下を歩きだしました。
歩いては止まり、歩いては止まり……。
私は縮こまって耳をふさぎ震えていました。
そしていつの間にか眠っていたようで目を覚ました時には昼近くになっており、廊下からはいつもの賑やかな声が聞こえていました。
昨夜のことは現実だったのか、それとも夢だったのか。
起きた頃には記憶が曖昧になっていました。
友人らにこのことを話しましたが、何も聞こえなかったと……。
それから寮を出るまであの足音を聞くことはありませんでしたが、寝る時は扉の下の隙間が見えないようダンボールなどを置いて、必ずカーテンを閉め、豆電球を点けておくようになりました。
今でも母校の学生たちに利用されている寮です。
この怖い話はどうでしたか?
chat_bubble コメント(0件)
コメントはまだありません。