昨夜の話です。 私は、何気無しにトイレに行きました。 うちのトイレには、トイレの中に洗面台があります。当然、鏡も。 私はいつもの様に、トイレから出る時に、 その洗面台で手を洗い、鏡を見ました。 いつもと同じです。 しかし、どう言う訳か、鏡に映っている自分の目から、目線が外せません。 どうにか横を見てみても、結局は鏡の自分の目を見ているのです。 私は怖くなり、何も考えずにトイレのドアを開けようとしました。 しかし、鍵もかかってないのに、いくらドアを叩いても開きません。 「ドアが開かない！」と叫びましたが、 家族は誰も来ません。 ちょうどトイレのある１階に、 父も母もいたのに。 私はパニックになり、ドンドンとドアを叩いて、 「トイレから出れない！！」 と叫びました。 その時でした。パニックに陥っていた私が、 ふいに気付いてしまったのです。 … 誰かが後ろから、私の服を引っ張ってる … 後ろは、便器がある方でした。 急に恐ろしさが増して、更に叫び続けました。 しかし、何かが引っ張るので、その場に座り込む形になってしまい、もうダメかも… と、 力が入らなくなってきた時に、 ようやく、ドアが開きました。 開けたのは、私ではありませんでした。 そこには、父と母が心配そうに立っていて、 母が私に手を差し伸べました。 母の手を、掴みたいのに掴めない… 届かないのです。 そうすると、母はトイレの中に、 足を１歩、踏み入れました。 「ほら！手を握って！！」 母は、そう言うと、何かから引き離す様にして、 私の手を引っ張りました。 不思議と起き上がれて、トイレから出ました。 しかし、父は、私の後ろの当たりをじっと見ていました。 昔、うちは料亭をやっており、私の祖父からの お店でした。 その頃から、私が産まれる前から、その鏡はそこにあったそうです。 その後、恐怖を感じながらもトイレに入ってみると、鏡はありませんでした。 母に聞くと、 「もう古かったし、捨てた」とだけ言いました。 あの鏡は、今までに、何人の人を映し出して来たのでしょうか。 私は少しホッとしましたが、 今でもトイレの洗面台に立つと、 そこにあった鏡を見るクセが、抜け切れません。