
彼女が帰国したのは、1年間の海外研修を終えたばかりのことだった。帰宅して3日目、冬の冷たい雨が静かに降り注いでいる夜、アパートに戻ると、すでに午後10時を回っていた。
小さな古びたアパートの中、雨音が静かに響く。彼女は、時差ぼけで疲れた体を引きずりながら、さっさとシャワーを浴び、温かいスープを飲んでから、早めに布団に入った。布団の中で、彼女はまぶたを閉じ、音を消すように耳を塞いでいた。
しかし、眠れないまま何時間かが過ぎた頃、ふと目を開けると、部屋の中がまばゆい光に包まれた。カーテンの隙間から漏れた光が、彼女の視界を一瞬奪った。
その瞬間、彼女は気づいた。押し入れの前に、何かが立っている。薄汚れた白い布を被ったそれは、ひどく痩せていて、足は泥だらけだった。恐怖にかられ、彼女は布団の中でじっとしていたが、心の中で声を上げた。
「誰、なの……?」
すると、突然部屋が再び暗闇に包まれ、何も見えなくなった。雷鳴が遠くで響き、彼女はタオルケットを頭から被り、身を縮めて震えていた。
朝になり、ようやく恐る恐る押し入れの前に近づいてみると、そこには何もなく、床は湿っていたが、異臭が漂っていた。
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その後、また『アレ』が現れたのは、冬の冷たい雨が降り続く10日後の夜だった。彼女は、学校で教え終えた後、遅く帰宅した。傘は役に立たず、彼女の服はびしょ濡れになっていた。
アパートの廊下に入った時、再び押し入れの前に立っていた。今度は、彼女が以前に教えた生徒の、かつての姿を思い出させるような形をしていた。彼は、薄汚れた布を被り、足元には布製の靴が見えた。
その瞬間、彼女の心に思い出がよみがえった。かつて教えていた生徒、リョウが、学校の帰りに事故にあったことを。彼は、いつも笑顔を絶やさず、彼女のことをよく慕っていた。
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数年前、リョウは彼女に『特別な石』を探しに行くと言っていた。その石は、彼にとっての幸せの象徴だった。しかし、その話の後、彼は行方不明になり、数日後に発見された際は、事故に遭っていた。
「リョウ、どうしてここに?」
彼女は恐る恐る声をかけた。すると、彼は無言で腕を伸ばし、手の中に何かを握りしめていた。彼女はその手を受け取った。
小さな石、深い海の色をしたそれは、微かに光を放っていた。彼女は、涙が頬を伝うのを感じながら、何も言えなかった。
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