
これは数年前の冬の夜に体験した出来事です。
当時、僕は古びた書店でアルバイトをしていました。冬の寒い日、閉店作業をしていると、外はすっかり暗くなっていました。書店の入り口には大きなショーウィンドウがあり、その向こうには街の灯りが煌めいていました。暇な時間、僕はふと外を眺めながら、訪れるお客さんを待ちわびていました。
ある晩、閉店の準備をしていると、ショーウィンドウの端に人影を見つけました。「お客さんかな?」と思い、目を凝らしましたが、誰もいません。気のせいだと思い、作業を続けると、再びその影が視界に現れました。今度は、長い白髪を持つ年配の女性が、薄い着物を着ているように見えました。
「何かいる…」と不安になりながらも、視線を戻して作業を続けますが、ふと気がつくと、その女性の姿は消えていました。
仕事を終えて帰る途中、街の静けさが不気味でした。時間は深夜を過ぎ、あたりは薄暗く、冷たい風が吹いていました。歩いていると、ふと湿った古本のような匂いが漂ってきました。「なんだこれ?」と思った瞬間、背中に冷たい感触が走り、振り返ると、誰もいないはずの後ろにその女性が立っていました。驚いて逃げるように走ると、匂いは消えましたが、心臓がバクバクと音を立てていました。
数日後、また同じように書店で作業をしていると、ショーウィンドウの外にその女性が立っているのを見ました。ゾッとしながら視線を向けると、やはり姿は見えません。しかし、視線を戻すと、彼女は同じ場所に立ち続けていました。気味が悪くなりつつも作業を続け、ふと振り向くと、今度は完全に姿が消えていました。
その後も、彼女の影は頻繁に現れ、日に日に近づいてきていると感じるようになりました。彼女が近づくのと同時に、書店内での怪我や小さな事故が増えていきました。恐怖に駆られた僕は、友人に相談し、お祓いを受けることに決めました。
お祓いの日の前夜、帰宅途中、また湿った古本の匂いがした瞬間、耳に引っ張られるような感覚が走り、足をもつれて転びました。幸い大事には至らなかったものの、彼女が近づいていると感じ、さらに恐怖が増しました。
お祓いを受けるために住職の元へ行くと、彼は僕の話を聞くなり言いました。「最近、大変だったでしょう?でも、もう安心してください。」その言葉にほっとし、これまでの出来事を話しました。そして住職が言ったのです。「見えたのは一人だけですか?」と。
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