あれはもう十数年間前の話になります。 当時、私はとある15階建て市営住宅の12階に住んでいました。 小学校に上がって間もないころ、私は友達が少なかったのですが、同じ住宅の7階に住んでいる3歳年上のSくんはいつもそんな私と遊んでいてくれました。 Sくんは現代で言うところのゲーマーだったので家に遊びにいくといつも一緒にゲームをして遊んでいました。 それから数年が経ち、小学校高学年になる頃には私にも友達ができ始め徐々にSくんと遊ぶ事も無くなっていきました。 私が中学校に上がるころには、それまで時々住宅のエレベーター等で見かけていたSくんも見かけなくなってきたので、母にSくんは最近どうしてるのかと尋ねたところ 「Sくんは中学校でいじめにあっていて、今は高校にもいかず引きこもっている」 そう告げられました。 Sくんとは3歳離れているので私が中学校に進学すると彼は卒業してしまうので、中学校でいじめられていたことは知りませんでした。 　 それから更に数年が経ち、私も高校へ進学し、遊びにバイトにと忙しく日々が過ぎていく中でSくんと言う存在は完全に頭の中から消えていました。 ある日、バイト終わりでクタクタになりながらも家がある住宅に辿り着き、1階でエレベーターが降りてくるのを待っていました。 少ししてエレベーターが降りてくると、どうやら中に誰かが乗っているらしく、とりあえず降りる人優先だな、と思い扉が開くのと同時に道を譲りました。 中から出てきた人は帽子を深々と被り、顔は俯いていてまったくわからなかったのですが、直感とでも言うんですかね「あ、Sくんだ」そう心の中で呟いたのを覚えています。 ただ、数年間会ってもいないのでどう話しかけていいかわからず、しかもこちらの事を覚えていないだろうしなぁなんて考えている内、彼はエレベーターホールから出て行ってしまいました。 家に帰り母にさっきあった事を伝えると 「...本当に？本当にそれはSくんだったの...？」 そうしつこく聞かれたので頷いていると母が 「Sくんね、先月7階の家から飛び降りて亡くなったんだよ。知らなかったの...？」 知りませんでした。過去に2,3回飛び降りをしていると言うのは聞いていました。 いじめを苦に自殺をしたがっていたみたいですが、過去のはどれも骨折等にとどまってしまっていたようです。 既に亡くなっていたと言う事実を聞いても尚、私にはあの日見た彼は絶