
冬の寒い夜、タケシはかつて成功した男として知られていた。彼が勤務していたのは、誰もが知る大手企業だった。昇進を重ね、年収は1000万を超えると期待されていた。しかし、過労によって彼の心と体は壊れ、全てを失ってしまった。やむなく故郷の山奥にある実家に戻ったタケシだが、新たな生活も長くは続かなかった。
実家では、兄夫婦と同居することになったが、兄の妻が妊娠すると、タケシは居場所を追われることになった。しかし、母の知人から驚くべきチャンスが舞い込んできた。100万円ほどで売りに出されていた古い家が、彼の手に渡ったのだ。実家から車で40分の距離にあるその家は、前の住人の物がそのまま残されていたが、タケシにとっては受け入れざるを得ない選択だった。
家は外観こそ古びていたが内部は意外にも整備されており、電気や水道も問題なく使えた。田舎特有の不便さはあったものの、周囲には食料品店も点在し、生活に困ることはなさそうだった。だが、彼には一つの悩みがあった。それは、時折現れる謎のオジサンだった。このオジサンは生きている人間ではなかった。
昼夜を問わず突如として現れ、タケシの心を不安にさせた。ある晩、トイレに立つと、布団の横にオジサンが正座していた。驚いても声をかけることもできず、彼はただその場から逃げるように戻った。しかし、そのオジサンは不気味さを感じさせるだけの存在であり、タケシに直接的な害を及ぼすわけではなかった。
そんなある日、タケシはふと思い立ち、残置物の仏壇にご飯と水、線香を供えることにした。さらに、その傍に置かれていた神棚にも同様に供え物をした。すると、不思議なことに、オジサンの姿を見かけなくなったのだ。なぜそうなったのかは分からないが、タケシは感謝の気持ちを込めて供え物を続けることにした。特に信仰心はない彼だが、何かに敬意を表することの重要性を感じたのかもしれない。
今ではタケシは新たな職に就き、苦労しながらも生活を立て直している。彼の選択がもたらしたものは、果たして何だったのか。答えは誰にも分からないが、彼は今、穏やかな日常を送っている。
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