
私が新しく配属されたオフィスには、何をしているのか謎めいた係長が一人いた。
彼は高層ビルの窓際にぽつんと座っていて、時折外を眺めると微笑みを浮かべていた。仕事はほとんどせず、ただ本を読んだり、メモを取ったりしていた。冬の夕方、暗くなるにつれて彼の姿がさらに不気味に感じられた。
ある日、同僚たちとの飲み会で、その係長のことを部長に尋ねてみた。最初は口を閉ざしていた部長も、酒が進むにつれて重たい口を開いた。
「そういえば、何年か前にこのビルで自殺した女性社員がいた。彼女はあの窓から飛び降りたんだ。それ以降、霊が目撃されるようになった。」
部長の話は続く。「あの係長は彼女の相談相手で、今もあの窓際で彼女を見守っているらしい。彼女は未練を残しているみたいで、係長はそのためにいるんだ。人は彼を守護者と呼ぶが、実際は彼女の存在に囚われている。」
その言葉を聞いた瞬間、私は背筋が凍った。窓の下には小さな供養塔があり、そこには花が供えられていた。
「オレが彼女に厳しく接したせいで、彼女が死んじまったのかもしれん・・・」と、部長は言った。
「そんなことがあるんですか?」
「オレも時々、あの窓から飛び降りたくなることがある。しかし、あの係長がいるからこそ、思いとどまれるんだ。」
「それなら係長には感謝ですね。彼のおかげでみんなが支えられているんですから。」
「そうだな、あいつがいるからこそ、みんながうまくやっていけるんだ。」
席に戻ると、私はその係長の姿を再び目にした。彼は今も窓の外を見つめ、微笑んでいた。その微笑みの裏には、どれほどの悲しみが隠れているのだろうか。私の心には不安が広がっていった。彼が本当に守護者なのか、それとも彼女の呪縛から逃れられない存在なのか、考えれば考えるほど混乱していく。
それ以来、私はその係長を見かける度に、彼と彼女の関係がどうなっているのかを考えずにはいられなくなった。
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