
長編
遺影
匿名 10時間前
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んだって。だからね、不思議なことでも、怖いことでも何でもないんだって。……分かった?」
いまいち良く分からなかった僕は、曖昧に首を傾げた。すると、ミキちゃんはますます困った顔をして、「ちょっと待っててね」 と言ってまた襖の向こうへと行ってしまった。
また大人たちの笑い声が聞こえた。
戻って来たミキちゃんは、遺影から見て左右、部屋の両端を交互に指差した。
「じゃあね。○○(←僕の名前)はこっちにおってね。あたしが向こうに行くから。それから、せーの、で写真を見るんよ。それで、ひいおじいちゃんが、あたしのことも○○のことも見てたら、それはおかしいでしょ? 一人は二人を一緒に見れないんだから」
僕は頷く。確かに、あの写真の位置から、部屋の両端にいる二人を同時に見ることは出来ない。
つまりミキちゃんは、部屋の左右から同時に写真を見上げて、二人が同時に写真の中の人物に見られている、というあり得ない状況を創り出すことで、それがただの『現象』 であって、不思議なことではないんだよ、ということを僕に伝えたかったのだ。
けれども、当時幼かった僕には、その実験の結果がどういう結論に至るのか、そこまで理解する知恵も脳細胞もまだ無く、ミキちゃんに言われるままに、ただそこに突っ立っていた。
ミキちゃんが部屋の向こう側に立った。
「じゃあいくよ。……せーの」
声に従い、遺影を見上げる。
「ほら、あたしのほう見てる。○○のことも見てるでしょ」
即答できなかった。
「……ううん」
見上げたまま、僕は首を横に振る。
「ひいおじいちゃん、ミキ姉ちゃんのほう見てるよ」
怖がらせてやろうだとか、そういう気持ちは微塵も無かった。見えたままを言っただけだ。写真の中のひいおじいちゃんの黒目の位置が先ほどとは違っている。明らかに僕でなく、ミキちゃんの方を見ていた。
「僕のことは見てないよ。ミキ姉ちゃんのほう見てる」
もう一度言った。
空白の時間が、数秒あった。
そして突然、ミキちゃんが大声で泣き出した。あまりに唐突だったので、僕は大いに驚いて、慌てた。抱いていた人形を放り出し、どうにかして泣きやまそうとしたけれど、無駄だった。
泣き声を聞き付けた大人たちが、ゾロゾロと部屋に入って来た。ミキちゃんが、「○○が怖いこと言った~」 と泣く。
唖然としていると、両親に、ミキちゃんを泣かした犯人としてひどく怒られた。あまりの理不
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- やっぱり男の子よりも女の子の方が可愛いっていって当然だよね。でも悲しいね。ぼんばー50
- あちゃー…匿名
- 最後のお婆ちゃんの言葉で笑ってしまった( ̄▽ ̄;)sora
- 不憫な僕ちゃん…新耳
- どうゆうこと?璃叶
- かわいそうに…。ぼくくん
- 予想できてしまったあな