
以前、葬儀会社で働いていたことがあった。
事務員として働いていたのだけれども、たまに人手不足から他の部署の応援にいかされた。
ある時、散骨をする部署の応援にいくことになった。
その部署は山や海に行き、粉末状にした遺骨を撒く部署だった。私が応援として向かったのは山の方だった。
勿論、どこの山でも撒けるわけではない。そこは会社が所有する山と呼ばれる小高い丘だった。丘の周囲は一応柵で囲われていたけれど、扉のような物はなく、誰でも出入り自由の状態だった。
ただ、登山好きの方がわざわざ登ろうと思うような場所でもなかった。ここを登るのは散骨を目的としたご家族と私たち社員の人間に限られた。
私は伊賀さん(仮名)という四十代の男性と一緒に散骨をする場所の下見に向かった。
小高い丘といっても鬱蒼とした林があり、険しい坂道が続く場所だった。
それは私たちが準備を終えて帰る時だった。
「昨夜も来ただろ? 夜は危ないからやめなさい!」
私と伊賀さんが山をおりると近付いてきた年配の男性が急に言ってきた。
何のことを話しているのかわからなかった。
その年配の男性は近所に住んでいる方で、昨夜二人組が懐中電灯も使わずに山を登って行ったのを見て、散骨課の人間が夜中に作業をしているのだと思って注意をしたのだった。
伊賀さんは少し間をおいてから「今後は気をつけます」と返事をしていた。
私は勿論初耳だったので夜中に準備の為に入ることもあるのかと驚いていた。ただ、年配の男性が「若い女性の二人組だった」と話しだしてから、社内の人間ではないと気づいた。散骨課は全員男性だったからだ。
年配の男性と別れて社用車が止まっている駐車場に向かう途中、私は訊いてみた。
「先ほどの話はあの方の見間違いでしょうか? 」
私の問いに伊賀さんは少し間をおいてから「いや、見間違いではないだろうな。以前も聞いたことがあるから」と話しだした。
どうやらこの目撃は初めてではなく、ここ数年で何度かあったらしい。しかもおそらく同一人物らしかった。
毎回聞かされるのが「若い二人組の女性」で夜中に侵入するというのが共通していた。
勿論、本社には連絡済みらしい。ただ本社から対策的な指示はなく、最初は伊賀さんも戸惑ったらしい。ある上司に伊賀さんがそのことを相談すると、その上司も以前本社に連絡したことがあるのだと言ったらしい。さらにその上司は夜中に入っていく二人組を偶然見かけたことがあるらしかった。
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