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長編

友人

匿名 2019年5月3日
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先日、小学生の時の体験を書いたが、今回は部活動入部前、私が小学校低学年の時に起こった不思議な少し怖い話。 私には入学と同時に仲良くなった男の子がいた。 仮にN君と呼ぶことにしよう。 N君とはクラスは違ったが、毎日のように一緒に帰り、毎日のように遊んでいた。 N君はとても器用な子で、自作で電気を使った玩具を作ったり、家の中をちょっとアスレチック風にしたりと、とても想像力豊かで毎日毎日が本当に楽しかった。 しかし、そんなN君は家庭の事情のためか、素行が悪い部分が目立った。 小学生にしてナイフを持ち歩いたり、タバコを吸ったり、火遊びをしてボヤを起こしたりといろいろと問題行動が多かった。 もちろん私もその場に一緒にいたため、一緒になって怒られていたのだが、それはそれで刺激的な毎日で楽しかったように思える。 しかし、ある日を境にN君の姿を見なくなった。 学校に来ないことは頻繁にあったのだが、それでも私の家の前で私の帰りを待ってくれてたりして本当に毎日のように顔を合わせていたのだが、1週間も2週間も姿を見ない。 もちろんその間に私が彼の家を訪れたりもしたのだが、インターホンを鳴らしても誰も出てこない。 (どうしたのだろう?) そう思いながら1ヶ月程経った時、担任からN君の転校を告げられた。 理由を聞いても濁されるばかりで、私は突然1番の友人を失ったのだ。 後に再会することが出来たので理由を聞いたのだが、親に有無を言わさず遠くの施設に預けられたらしく別れの挨拶をする暇も与えられなかったらしい。 しかし、その時の私にはそんなことを知る由もなく、ただただショックを受けたことを覚えている。 早々にそのショックから立ち直ることが出来るはずもなく、私は彼の家に何度も行った。 もしかしたらその話は嘘なんじゃないだろうか、と信じたくない現実に抗いたかったのだろう。 しかし、やはりそれは現実で、彼と一緒に遊んだ玩具や彼の自転車、何もかもがそこから無くなっていた。 それからどれくらい経った頃だろうか。 ある日、たまたまN君の家の前を通る機会があった。 そんなに時が経っていたわけでもないのに凄く懐かしく思え、N君の家をしばらく眺めていた。 すると、家の中で物音がした。 (N君が帰ってきた‥!) 私は玄関口に急いだ。 しかし、N君という確証はない。 もしかしたら他の人がN君の家に住み始めたのかもしれない。 インターホンに伸ばした指だったが、押す勇気が出ず、そのまま引っ込めた。 すると、いきなり玄関の扉が開いた。 突然のことに私は逃げることも出来ず、そのままその場で固まる形になってしまった。 玄関から出てきたのはまさかのN君。 ではなく、私と同じ歳くらいの知らない男の子。 仮にY君と呼ぼう。 (やっぱり違う人が住み始めたんだ) そう思った私はその場から逃げるように走り出した。 すると 「君、○○だよね?」 と、私の名前を呼んだのだ。 驚いた私は逃げる格好のまま首だけをその子に向けていたのだが、Y君は笑みを浮かべて 「Nから話は聞いてる。俺はNの親戚なんだ。 これからこの家に住ませてもらうことになった」 話を聞くとY君も家の事情で転校することになり、N君達のいなくなった家に住むことになったのだそうだ。 もちろん私達はすぐ仲良くなった。 Y君が私と同級生ということ、N君の親戚であるということ、それだけで仲良くなるには十分だった。 しかし、仲良くなって気付いたのだが、Y君はN君とは真逆のタイプだったように思う。 自慢話が多く、どこかお金持ちのような雰囲気。 N君のような器用さはなく、山の中や川で遊んだり汚れたりするのが嫌い。 何より、N君は不良と呼ばれるタイプの人間だったが誰に対してもとても優しかった。 しかしY君は陰湿で思い通りにいかないとすぐに暴力を振るう。 それが学校であれども構わずに、だ。 それも周りが止めないといけないほどに限度を知らない。 同じ血が流れてるのにこうまで違うものかと思ったほどだ。 ただ、唯一N君と変わらなかったことは私に対する態度だけ。 私には暴言を吐くことも暴力を振るうことも一切なかった。 いや、N君と変わらないと言うのは少し違うか。 その子はまるで私が誰よりも1番の存在であるかのような態度だった。 私が何かをしたいと言えば力尽くでも周りを従わせていた。 そして、私と2人で遊ぶのを好んだ。 しかし私は大勢で遊ぶのが好きだったし、友人を平気で傷付けるY君に嫌悪感を覚え、少しずつ距離を取るようになっていった。 そして時間は流れ、Y君と出会ってからどれくらいかの月日が経とうとしていた。 その頃にはY君とは滅多に遊ぶこともなくなっていた。 そしてその頃くらいから夢を見るようになっていた。 恨めしそうな目をして私をジッと見つめるY君がいる。 すると突然何かを喚きながら私に近付いてくる。 只事ではないと感じた私は背を向け走り出す。 しかし距離は詰まる一方で、いつしか追い付かれる。 Y君は、手にしていた刃物で私を滅多刺しにする。 動かなくなった私の上でY君は何かを呟いている。 そんな夢だ。 そんな夢ばかりを見ていた私はいつしか現実に起こるのではないだろうか、と考えた。 あれだけ暴力を振るうY君なら有り得る話だ。 そして最近姿を見ていないのも気掛かりだった。 学校にも来ていないのだ。 私は友人数人を連れてY君の家に行くことにした。 姿が見えない間に何をしているのか、どうしようもない事態ならY君の機嫌をとる必要がある、とそう考えていた。 本当に夢の通りになったらどうしよう、などと考えながら木の棒という何とも頼りない武器を片手に、私達はY君の家に向かった。 もちろん夢の話は友人にはしなかった。 夢の話を信じるなど馬鹿らしいことだし、信じてくれるとも思っていなかったからだ。 だから、遊びの一環、という体での誘いだった。 目的地に到着し、インターホンを鳴らした。 鼓動が異常な程に速くなる。 だが、誰も出てくる気配がない。 もう一度鳴らす。 やはり気配がない。 (どこかに出掛けてるのかな?) 拍子抜けと安堵感を抱えた私が踵を返そうとした時、1人の友人がこう言った。 「N君帰ってきてるの?」 何を言っているのだろうか。 N君はもう何ヶ月も前にいなくなったではないか。 「Y君最近見てないから何してるのかなって思っただけ」 「Y君って誰?」 (え‥‥?) 「ここはN君の家じゃん」 言っている意味が分からなかった。 確かにN君の家ではあるが、今はY君が住んでいる。 だからY君がここにいることは皆知っているはずなのに、まるで初めからそんな人などいなかったような、そんな口振りだ。 確かに私以外はY君から酷い仕打ちを受けていたから、無視でもしたい感覚なのは分からなくもない。 しかし皆、本当に知らないような顔で私を見てくる。 「何言ってんの?皆で遊んだりもしてたじゃん」 私が言うと、皆が困ったように顔を合わせている。 訳が分からなかった。 私も何を言えば良いのか分からず、所在無さげに視線を彷徨わせていると、ある事に気付いた。 Y君が持っていた玩具や自転車もそこにはなかった。 全てがN君が出て行ったままなのだ。 庭の草も伸びっぱなし。 よく見ればそこら中蜘蛛の巣が張っている。 よく考えれば確かに変だ。 誰が好き好んで酷い仕打ちをした相手の家に行きたがるだろうか。 何が起こっているのだろうか。 私は狐につままれたような気分になった。 その後、適当に話を合わせてその場を後にした。 次の日学校でY君のことを聞き回った。 先生にも生徒にも聞いた。 だが、誰1人として覚えていない。 誰か1人くらい悪口なり何なり言っても良いはずなのに、誰1人として 「知らない」 そればかりだ。 考えてみれば、Y君を校舎内で見かけたことがない。 仲良く遊んでいた頃も、一緒に帰ろうとY君の教室まで行ってもいつもY君はいなかった。 グラウンドでY君と一緒に遊んでいた友人達も昨日の友人達で、それ以外の人と遊んでいるY君を見たことがない。 ましてやその担任までもが 「誰だい?そのY君って」 そう言われてはどうしようもない。 (何で誰もY君のことを知らないって言うの?) 私には何が起こっているのか理解出来なかった。 Y君は実在した人で、現に私と友人達は遊んでいる。 なのに誰1人知らないと言う。 一緒に遊んだ友人達までもが、だ。 私は何が起こっているのか確かめるためにY君の家を再度訪れた。 やはり、何ヶ月も前にN君が出て行った時と変わらない。 何もない。 この前まで間違いなくあったはずのものが、そこには何もなかった。 インターホンを鳴らした。 何度も鳴らした。 だがやはり何の気配もない。 恐怖心も何もなかった。 ただ何が起こっているのか、と困惑した感情でいっぱいだった。 Y君なんていない 信じられるわけがない、だけど信じるしかない現実に困惑したまま、私は帰ろうと一歩下がった。 その時、私の視界にリビングのカーテンが微かに揺れるのが見えた。 リビングに目を移す。 が、誰もいない。 気のせいか、とそう思った瞬間、目が合った。 リビングのカーテンの隙間から覗く目。 小学生くらいの高さの位置にある目。 陽の光に照らされたレースのカーテンはその人物のシルエットを浮かべている。 浮かべているはずなのに。 身体はそこにはなかった。 身体はないのに、目だけが私を見ている。 しかし、それが本当に目だったのか、私には確認することは出来なかった。 私はその場から逃げ出すことで頭がいっぱいだったから。 目が合った瞬間、私がその場に固まった数秒間。 頭の整理を行った数秒間。 私のすぐ後ろから声がした。 「あと少しだったのに」 後日談だが、N君は中学生の時に戻ってきた。 突然いなくなった理由と一緒にY君のことを聞いてみたが、そんな名前の親戚も同じ年齢の親戚もいないと言われた。 そして 「あと少しだったのに」 あの言葉の意味もよく分からないままだ。 信じられないかもしれない。 私自身、未だに信じられない。 だけど私だけの身に起きた、本当の出来事。

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