
あれは、今から5年ほど前のこと。
秋の澄んだ夕暮れ、私たち大学生のグループはキャンプ場でのんびりと過ごしていた。周囲は静まり返り、焚き火の明かりが心地よい暖かさをもたらしていた。
友人たちが楽しそうに談笑する中、私はふと一人になり、焚き火の周りを散歩することにした。木々の間をぬって歩くと、足元に何かが引っかかり、見ると小さな茂みがあった。そこで「おーい、助けてくれ」というかすかな声が聞こえた。
その声は、まるで誰かが命を懇願しているようで、生気が失われた響きだった。心臓が早鐘のように打ち始め、私の好奇心がその声の元へと引き寄せる。恐る恐る近づくと、目の前には土に埋められた若い男性がいた。彼は頭だけを出し、ぐったりとした様子で息を潜めていた。
男は顔色が悪く、目は焦点を失い、何かを訴えかけるように見えた。周囲には誰もおらず、彼を助ける人はいなかった。ふと、彼が埋められた理由が気になり、思わず掘り始めたが、すぐに恐怖が押し寄せてきた。
「このままでは死んでしまう!」その考えが頭をよぎる。だが、掘っても掘っても彼の身体は見えなかった。彼は「ん゛んーーーーー」と呻き、泡を吹き始めた。私は恐れのあまり、その場から逃げ出すことしかできなかった。
その出来事を友人たちには決して話さなかった。もしあの時、私が助けていれば、彼は生き延びたかもしれないと、子ども心に責任を感じていたから。
数年後、あるドキュメンタリー番組を見ていると、衝撃的な事実が明らかになった。数年前、同じキャンプ場で、男が埋められたまま熱中症で命を落としたというニュースが流れた。私が出会ったあの男だったのだ。
彼の顔、埋もれた土、焦点の合わない乾いた目、全てが鮮明に蘇る。しかし、私は彼を助けなかったことを今でも後悔していない。なぜなら、その男が亡くなったのは、私が見つけた日からずっと前のことだったから。彼は、何かの運命に翻弄されていたのかもしれない。
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