
冬の夜、真新しい高層ビルに引っ越してきた私は、静けさを楽しんでいた。しかし、入居から数週間が過ぎたある日、インターホンの音が響き渡った。時計を見ると、23時を過ぎていた。
「もしもし?」と受話器をとると、そこからは不気味な声が聞こえてきた。
「上の者だが…!」
驚きと共に声を聞いた私は、恐る恐る続ける。「何かお困りですか?」
「うるさい! いつも声が聞こえる!」
その言葉に耳を疑う。私の部屋からは声など出していない。何を言っているのかと思い、ただ困惑するしかなかった。
翌日、郵便受けに「騒音についての苦情」という手紙が入っていた。心当たりはないため、管理人に連絡し、誤解を解こうとした。
数日後、再びインターホンが鳴った。今度は明らかに冷静で柔らかな声だった。
「夜分遅くに申し訳ありません。下の者ですが…」
その声は、あの時の怒鳴り声とは対照的だった。話を続けると、老夫婦の奥さんが出てきた。彼女は夫が長い間寝たきりであることを語り始めた。
「体が動かないので、いつも声を聞いているのです…」
私は驚愕した。まさか、あの怒鳴っていたおじいさんがそんな状態であるとは。録画を見せると、奥さんは顔を青ざめて固まってしまった。
それから一週間後、悲しい知らせが届いた。おじいさんが亡くなったのだ。あの夜、私の部屋に来たのは本当に彼だったのだろうか。彼が聞いた声とは一体何だったのか。私には答えが分からない。
インターホンの録画を確認する勇気もなく、ただ静かにそのことを思い出す日々が続く。あの声は私の心にずっと残り続けるだろう。何も聞こえない静かな冬の夜、私はその声を忘れられない。
それが、私のマンションでの不気味な出来事だった。もう二度とインターホンの音を聞きたくない。
このビルには、何かが宿っているのかもしれない。
インターホンの履歴は今も残っているが、それを再生することはできない。
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