
数日前のこと。
冬の午後、体調が優れなかった私は、自営業の特権を活かし、早めの休養を取ることにした。しかし、寝込むほどではないので、趣味のスノーボードの本を読んでいた。
その時、友人のHから電話が入った。
「スノーボードに行こう!」
Hは朝からスノーボードを楽しんでいたが、いつものゲレンデが混雑しているため、私が最近見つけた穴場に行こうということだった。
体調が今一つな私は、最初は断ろうとしたが、Hは「外に出た方が気分がいいよ」と言い、車の手配もしてくれるという。仕方なく、私は同行することにした。
車で30分ほどの山道を進むと、静かなゲレンデに到着した。少し前に来たとき、景色が美しく、他のスノーボーダーも少なかった印象があった。
Hはすぐにボードを準備し、早速滑り出した。私は少し離れた場所で自分のボードを出したが、体調が優れないため、なかなか集中できなかった。
30分ほど滑った後、アタリもなくなったので、私は休憩することにした。周囲の静けさを楽しみながら、Hの滑る姿を眺めていた。
しばらくして飽きてきた私は、少し下山して新しいスポットを探しに行くことにした。Hにその旨を告げ、山道を下り始めた。20分ほど歩き、次に来るときのためにいい場所を見つけた。
戻る途中、Hの姿が見える位置まで来たとき、対岸に人影を見つけた。スノーボーダーだろうか?
Hの真向かいにいるその人は、どう見ても滑る準備をしている様子ではなかった。だが、その時は気にせず、Hに視線を戻した。
Hの様子がおかしいことに気づいた。ボードを持たず、ただ一点を見つめ、まるで硬直しているようだった。
私はおそるおそるHに声をかけた。「おい、大丈夫か?」
Hは私の声に驚き、急に動き出した。「帰ろう、すぐに。」
私は何が起こったのか理解できず、戸惑っていると、さっきまで見えた人影が消えていた。
Hに「あの人、さっきまでいたよな?」と尋ねると、Hは驚愕の表情で対岸を見つめ、すぐにその場に座り込んだ。
Hの話によると、私がいなくなった後、対岸にいる人に気づいたという。中年の男性で、スノーボードの格好をしていなかった。彼はただHを見つめていた。
Hは不気味に感じ、目を逸らそうとしたが、結局その人がHを見つめ続けているのが気になって、動けなくなってしまった。
私が戻ったことでその人が消え、Hはほっとしたものの、恐怖から力が抜けてしまったのだ。
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