
中編
中一の夏の話し
匿名 2014年8月15日
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未だに謎な夏の日の出来事です。
あまり話を書くのが上手では無いため怖くないかもしれません。
私が中学生に上がって始めての夏。その日は雲一つなく照りつける日差しが肌を焼いて、蝉ですら何処か力無く鳴くぐらい暑い日でした。
実家に置いてある日捲りカレンダーを見ると、夏休みも中盤に差し掛かった8/17でした。これはハッキリと覚えています。
午前中は何かする気も起きず、宿題にも手をつけないまま昼食の冷やし中華を食べ終えてもだらだらと畳の部屋で寝転がっていると、友人が家を訪ねてきました。
『たたかろちゃん、山に行こう』
私の家は山と田んぼに囲まれています。そして私は小学生の頃からよく山に遊びに行き、その山頂にある石造りの祠?のようなものを掃除したり、その周辺で遊ぶことがすきでした。そこの山にはトンネルがあり、トンネルが出来る前は祠の近くに道が敷かれていたらしく、今は使われていない凸凹の道が続いています。少し荒れているとは言え、獣道でも無いので子供の足でも簡単に上り下りが出来る、冒険心溢れる小中学生にはたまらない遊びスポットでした(といっても近くに子供が少なかったのでなかなか人には出くわさなかったが)。
特にすることもなかった私は、仕事が休みで居間でお昼寝をしていた母に山に遊びに行くことを伝え、すぐに家を飛び出しました。
その子と私は徒歩で山を登り、久しぶりに訪れたため荒れていた祠を簡単に掃除し手を合わせ、鬼ごっこや木登りなどをして遊びました。
そして日も傾きヒグラシが鳴き始めたころ、充分に遊んだ私達は山を降りることにしました。
『楽しかったね』
私がそう声をかけると、そうだね、と弾んだ声でその子は答えました。
山路を降りている途中、見慣れない道に気が付きました。小さな獣道で、入り口には役割を果たしていない街灯が一つ。まだ夕方で日もあり、家までは30分もかからずに帰れると考えて、好奇心を擽られた私達は道に入って行きました。木と竹が生い茂り民家もなく、結局行き着いたのは大きな苔むした岩が一つ転がる閑散とした空間でした。ガッカリしつつも帰ろう、と元来た道に足を向けた瞬間。本当に一瞬だった気がします。それまで茜色に染まっていた空が突然夜になったのです。
驚いて私は悲鳴を上げました。当然怖かったです。街灯一つなく明かりは月と星の僅かな光だけ。目が慣れても元の道も分からずにその空間から動くことはできませんでした。
仕方なく岩に背中を預けながら私達はその日の夜をしのぐことにし、会話をしながら満点の星空を見て夜を越しました。
いつの間に眠っていたのか、目を開けると既に陽は登り切り、前日と同じく茹だるような暑さの中力無く蝉が鳴いていました。外で寝たため固まった背中に不快感を覚えながらその子を起こし、元来た道を戻りました。
ああ、きっと怒られるだろうな。
激怒した母の顔を思い浮かべながら重い足を引きずり帰宅し、ただいま、と声をかけると驚いた顔をした母と玄関先で出会いました。
『なんだ、外に出てたの?』
怒った様子もなく軽い口調でおかえりと母は言い、昼食の準備に取り掛かりました。都合良く友達の家に泊まっていたと思ってくれたんだろう…と思考し、怒られないことに安心しながら1日ぶりのシャワーを浴び、涼しげな冷やし中華を食べて宿題に取り掛かりました。一向に減ってる気がしない宿題に重いため息を吐きながらカレンダーを見ると、まだまだ夏休みの宿題を終わらせるには間に合いそうな中間の日、8/17と書いてありました。
と、こんなこともあったねとついこの間思い出話しを母と話していると、母は顔を歪めて『そんなことはない』『娘の行き先も知らないで泊りに行かせたことは一度もない』と言い張るんです。確かに中学生の頃は親が把握していない場所へ泊りに出かけることはできなかったと思います。親同士が必ず連絡を取り合い、子供が何処にいるのか確認が義務付けられていました。特に私の親はそういうことに厳しく、あの日のように1日行方不明になっていたらもっと大変な騒ぎになっていたと思います。
では、友人はどうだったのか。
その当時のことを彼女に聞きたかったのですが…私は気が付いたのです。
その友人の顔も名前も居場所も一切、思い出せないことに。
長くなってしまいましたがここまで読んでくださってありがとうございました!フィクションっぽく書いたノンフィクションなので、今でも思い出すとゾッとします…。気が付かないこともあるんですね…。
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