
中編
先回り図書館
匿名 2020年5月9日
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これは、わたしの話ではなく友人から聞いた話です。
仲良しの友達なので、愛の頭文字を使ってAちゃんとしましょう。
また、少々生々しい表現があるので注意してください。
Aちゃんが大学二回生の頃の話なので、おそらく一年ほど前の話です。
二回生ともなると専門科目が増えて、図書館で資料を集めることが多くなってきていたんですね。
わたしもAちゃんも田舎に住んでいるので、必然的にいつもいく図書館が決まってきます。
その図書館は少し古めで蔵書数も良いとは言えませんが、平日は人が少なく大学生にはうってつけの場所だったんです。
ところでAちゃんはすこしズボラな女の子でした。
大抵の図書館には検索機能がありますよね?
勿論、それ自体はうちの図書館にもあります。
しかし、普通の図書館では本の所在を検索した後その情報を紙にしてくれるプリンタがあると思うんです。
田舎が関係するかわかりませんがうちの図書館にはプリンタがなく、自分で所在をメモするか覚えているうちに本を探しにいくしかないんです。
Aちゃんは検索した本の所在をメモすればいいものを面倒だという理由で頑なにメモをしない子でした。
とは言ってもAちゃんの探す能力が優れているかと言われるとそうでもなく、本の所在を検索してそれを覚えたと思って探しに行っても正確な場所がわからず見つからない。仕方ないのでもう一度検索をかける。また探す。運が悪いのまたわからずに検索をかけないといけない。
メモをするほうが最早早いのではないか?と思いますが数列などを書くよりは自分の足で探すほうがよいというのがAちゃんの主張でした。
事実、Aちゃんは図書館を探索するのが好きなようでそれをあまり面倒がっている印象は受けませんでした。むしろ楽しそうだったとさえ感じます。
しかし、図書館通いを続けていて一つ変わったことがあったそうです。
Aちゃんが借りたい本にいつも皺がよっている。それも、すこし折り曲げてしまった程度ではなく何度も何度もぐちゃぐちゃと曲げたような跡がついていたそうです。
Aちゃんはズボラでしたが本の扱いには気をつけていましたから嫌だ嫌だと感じていたそうですが、古い論文が多いので仕方がないことなのかと自分を納得させていました。
その日も、いつも通りでした。Aちゃんが本を検索して探しにいく。しかし、珍しく一発で本が置いてある棚が見つかったようでAちゃんはとても嬉しかったそうです。
そしてそっとその棚に近づこうとした時、そこに人がいました。
Aちゃんはすこし人見知りでしたので、狭い図書館で二人きりになると気まずいと感じ、さっと本棚に隠れました。
その人は40代後半でしょうか?中年の男性が立っていました。
しかし、その立ち姿が異様なのです。その男は、体を前後に揺らすように立っていたそうです。目は虚ろで口からは涎が垂れているのが遠目にもわかったそうで…
Aちゃんは引きかえそうと思いましたが、その男の手の中をみて足を止めました。
赤い装飾の分厚い本。
間違いなくAちゃんが探していた論文です。
男はその本を持ちながら前後にゆらゆらと激しく揺れています。
遠目にも異様とわかる光景に、Aちゃんは怯え逃げるべきだと感じながらもじっと見つめてしまったらしいです。
そして、その男が持っている本をぼーっとみていたらあることに気づきました。
男は本であることをしている。
ページのページの隙間に男性器を挟んで激しく手で擦っていたのです。
Aちゃんは生理的嫌悪感に襲われましたが、見つかると大変なことになるのではないかと口を手で押さえました。
一心不乱に男性器を本に擦り付ける男は、やがてその動きをやめて元の場所に本を戻しました。
男が早足でそこを去ったのを確認した後、やめればよかったのにAちゃんはそっとその論文を開いたそうです。
見覚えがありました。
Aちゃんが借りようとしていた本に、いつもいつもついていたあの皺です。
思わずAちゃんは本を取り落としました。
震える足でその場を後にしようと後ろを見たその瞬間、本棚と本棚の間そこで男がAちゃんを眺めてにや〜っと笑っていたそうです。
後日談:
- 実話です
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