本当にあった怖い話

怖い話の投稿サイト。自由に投稿やコメントができます。

長編
潮鳴様
長編

潮鳴様

2025年7月13日
怖い 20
怖くない 28
chat_bubble 0
4,522 views

日が沈みきる数分前の空は、光の名残を惜しむように金と藍の層を織り交ぜていた。

その下で、三人の男たちが海に浮かんでいた。

AとBは波待ちをしながら談笑している。

「なんだかんだで、久しぶりだな」「そうだな、三人揃うのは二年ぶりか?」

――けれど、Cは笑っていなかった。

沖を、見ていた。

その目は何かを見ているようで、何も見ていない。

次の波が来る前に、Cはゆっくりとボードから足を下ろした。

そして、海から上がると、無言で砂浜を歩き始めた。

「……おい、C?」

Aが声をかけた。反応はなかった。

ボードも濡れたスーツもそのまま、Cはそのまま砂丘の向こう――森へと入っていった。

AとBはあわてて追いかけた。

その時点ではまだ、「変なことになった」とは思っていなかった。

Cが体調を崩したとか、何か急に思い出したとか、そんな類の事だと――

だが、森に入った瞬間、空気が変わった。

音が遠い。風もない。

木々の間を縫うような道はなく、ただ鬱蒼とした緑が口を開けていた。

そして、そこには**地図にないはずの“奥行き”**があった。

Cの姿は見えない。

足音も、影も、残っていない。

AとBは何も言わず、ただその場に立ち尽くしていた。

「……なあ、A……」

「ん」

「なんか、波の音、聞こえねぇか……?」

Aは一瞬、聞こえないと答えようとした。

だが、耳を澄ますと――確かにそれはあった。

この森の奥から、潮が満ちるような音が、波打ち際のように、ゆっくりと近づいてくるのだった。

AとBは小走りで引き返した。

森の奥には進まなかった。進めなかった。

戻る途中、振り返ったAは、視界の隅に白い影を見た気がした。

――風で揺れる布のようだった。

――それとも、人のようだった。

海に戻ると、空はすっかり夜だった。

Cの姿はなかった。

波の音だけが、深く、静かに、満ちていた。

警察の報告は、簡潔だった。

「30代男性・C氏が海岸から離れ、森に入ったまま戻らず。目撃者は二名。

遺留品はサーフボードとウェットスーツ一式。森に足跡なし。」

佐原敬一は、その報告書を読みながら無意識に額に触れていた。

現職の警察官ではない。彼は「補助員」だ。

県の文化財保護課と提携した、民俗信仰や土着伝承に関わる「調査対象」の一次判定要員。

人が“理屈ではない何か”に触れたとき――佐原の出番が来る。

彼はその日、単身で表浜の海岸へ向かった。

風はほとんどなく、砂は乾いていた。

日中でも人影はまばら。

1 / 6

後日談:

  • 以前別の怪談サイトにも投稿した話です。
アバター 001_001

はじめまして、よろしくお願いします。

投稿数 1
怖い評価 20
閲覧数 4.5k

この怖い話はどうでしたか?

f X LINE

chat_bubble コメント(0件)

コメントはまだありません。

0/500

利用規約をよく読んで、同意の上でコメントしてください。

・連続コメントは禁止しておりますが、新規登録・ログインすることで、連続コメントも可能となります。

お客様の端末情報

IP:::ffff:172.30.0.250

端末:Mozilla/5.0 AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko; compatible; ClaudeBot/1.0; +claudebot@anthropic.com)

※ 不適切な投稿の抑止・対応のために記録される場合があります。

label 話題のタグ

search

【参加型】投稿企画・タイアップ企画

  • 禍禍女
  • 心霊スポット
  • 意味怖

一息で読める短い怪談

読み込み中...

じっくり染み込む中編怪談

読み込み中...

深夜に読むと戻れなくなる長編怪談

読み込み中...
chat_bubble 0