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長編

潮鳴様

匿名 2時間前
怖い 20
怖くない 28
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日が沈みきる数分前の空は、光の名残を惜しむように金と藍の層を織り交ぜていた。 その下で、三人の男たちが海に浮かんでいた。 AとBは波待ちをしながら談笑している。 「なんだかんだで、久しぶりだな」「そうだな、三人揃うのは二年ぶりか?」 ――けれど、Cは笑っていなかった。 沖を、見ていた。 その目は何かを見ているようで、何も見ていない。 次の波が来る前に、Cはゆっくりとボードから足を下ろした。 そして、海から上がると、無言で砂浜を歩き始めた。 「……おい、C?」 Aが声をかけた。反応はなかった。 ボードも濡れたスーツもそのまま、Cはそのまま砂丘の向こう――森へと入っていった。 AとBはあわてて追いかけた。 その時点ではまだ、「変なことになった」とは思っていなかった。 Cが体調を崩したとか、何か急に思い出したとか、そんな類の事だと―― だが、森に入った瞬間、空気が変わった。 音が遠い。風もない。 木々の間を縫うような道はなく、ただ鬱蒼とした緑が口を開けていた。 そして、そこには**地図にないはずの“奥行き”**があった。 Cの姿は見えない。 足音も、影も、残っていない。 AとBは何も言わず、ただその場に立ち尽くしていた。 「……なあ、A……」 「ん」 「なんか、波の音、聞こえねぇか……?」 Aは一瞬、聞こえないと答えようとした。 だが、耳を澄ますと――確かにそれはあった。 この森の奥から、潮が満ちるような音が、波打ち際のように、ゆっくりと近づいてくるのだった。 AとBは小走りで引き返した。 森の奥には進まなかった。進めなかった。 戻る途中、振り返ったAは、視界の隅に白い影を見た気がした。 ――風で揺れる布のようだった。 ――それとも、人のようだった。 海に戻ると、空はすっかり夜だった。 Cの姿はなかった。 波の音だけが、深く、静かに、満ちていた。 警察の報告は、簡潔だった。 「30代男性・C氏が海岸から離れ、森に入ったまま戻らず。目撃者は二名。 遺留品はサーフボードとウェットスーツ一式。森に足跡なし。」 佐原敬一は、その報告書を読みながら無意識に額に触れていた。 現職の警察官ではない。彼は「補助員」だ。 県の文化財保護課と提携した、民俗信仰や土着伝承に関わる「調査対象」の一次判定要員。 人が“理屈ではない何か”に触れたとき――佐原の出番が来る。 彼はその日、単身で表浜の海岸へ向

後日談:

  • 以前別の怪談サイトにも投稿した話です。

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