
中編
山道の熊
匿名 2日前
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る彼女の口を必死に塞ぎ、「熊。熊。声出しちゃダメ」と耳打ちしました。彼女はヒッと声を上げましたが、黙って頷いてくれました。
その時、またバラックを叩く音がしました。いや。正確には引っ掻く音が聞こえました。ガリガリ、ガリガリ。熊がバラックをどうしようと考えていたのかは分かりませんが、当時は熊がバラックに押し入ろうとしていると考え、なんとか助けを呼ぼうと思いました。
涙を流す彼女に「逃げよう。歩ける?」と聞くと彼女は小さく頷きました。窓からは相変わらず熊の姿が見えます。私は壁にかけてあった鉈を手に取りました。万が一襲われた時はこれで抵抗して彼女だけでも逃がす。今考えるとお笑いですが、当時は真面目にそう考えていました。
バラックのドアは幸い窓の反対にあったため、私たちは静かにドアを開けました。そして静かに山をくだろうとしたのですが、熊に見つかりました。熊と目が合ったのです。熊の危険と隣り合わせの地域に住む私たちは、熊に遭遇した際は背を向けないよう学校で教わっていたため目が合ったのですが、初めて見る熊のプレッシャーはこの世のものとは思えませんでした。
熊の胸には白い毛が生えています。ツキノワグマです。私は彼女に「後ずさり、後ずさりだよ。背向けたらいかんよ」と震える声で伝えました。熊に背を向けてはいけません。
不幸中の幸いか私たちは坂で熊と向かい合い、そして熊よりも低い位置にいました。熊は前足が短いので上り坂は平気なのですが下りはそんなに早くありません。私たちは決して目線をそらさず、後退りを続けました。
十分な距離を取れたと思ったタイミングで、鉈を投げ捨て彼女に「背中に乗って」と伝えました。そして彼女をおぶって全速力で家に逃げ帰り、祖母に熊が出たことを伝えました。
そこからは大変な騒ぎになりました。
村で情報が共有され、役所にも連絡が行きました。少したって猟友会?の方たちが山に入っていったとの連絡を受け、その更に数時間後には熊を仕留めたと祖母から伝えられました。
彼女とは山を散歩してただけって伝えましたが、そもそも熊が出たというニュースが大きすぎてそこをそんなに追求されなかったのはラッキーと思いましたが、もう二度とあんな思いはしたくありません。
後日談:
- 彼女とはその後向こうの両親が仕事、祖父母が旅行に行ってる間に彼女の家で事を済ませました。
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- 霊怖でも人怖でも無く熊怖ですね!リアルに怖いですよね!うんこりん