
高1の春に旧館で目をつけられ、高2の夏に美術室で襲われ、なんとか生き延びて迎えた「高校3年生の1月後半」の話
大学入試もひと段落し、学校は家庭学習(自由登校)の期間。あとは2月の卒業式を待つだけだった俺が、荷物の整理のために、夕方一人で新校舎へ向かったところから始まる。
夕方16時半。冬の日は短く、校内はすでに薄暗い。職員室にも最低限の先生しか残っておらず、生徒の姿は一人もない。
私物をバッグに詰め込み、誰もいない3年の教室を出て、静まり返った廊下を歩いていたその時、天井のスピーカーから「プツッ……ジーー」と、耳障りなノイズが流れる。
直後、「死んだ魚のような、抑揚の全くない無機質な女の声」で、校内放送が始まった。
『これより、数合わせの点呼を行います。3年〇組、1番、〇〇(実在する同級生の名前)……』
それは、俺のクラスの出席番号を1番から順に読み上げる、不気味な点呼だった。
悪戯か、あるいは先生の連絡ミスかと思いながら歩を進めるが、なぜか歩いても歩いても、階段や昇降口(玄関)にたどり着けない。
廊下の景色が不自然にループし、窓の外の景色は街灯すら見えない真っ暗闇に変わっていく。
スピーカーの声は淡々と続く。
『2番、〇〇……3番、〇〇……』
その声が同級生の名前を呼び上げるたび、脳内にある異変が起きる。呼ばれた奴の顔や、3年間の思い出が、頭の中からパズルのピースを抜かれるように、綺麗さっぱり思い出せなくなっていく。名前は覚えているのに、そいつがどんな奴だったのかが完全に消えていく。
ここで俺は直感する。この点呼は、「学校の土地が、生徒たちの記録と記憶を消去して『最初から存在しなかったこと』にしている数合わせ」なんだと。
そして、俺の出席番号が呼ばれた瞬間、俺という存在そのものがこの世から消去され、卒業どころか、大学1年になっているはずの「今の俺」すら消える。
スピーカーの声はすでに20番台に突入。俺の番号まであと数人。
焦りで心臓が破裂しそうになる中、スマホを取り出すが圏外。
しかし、高1の時や高2の時の経験から、俺は必死に「この怪異のルール」を見つけようとする。
ループする廊下の壁、掲示されている「卒業生への寄せ書き」の文字が、放送の声に合わせて1行ずつ白く擦り切れて消えていくのを目撃する。
俺は自分の番号が呼ばれる直前、ある「誰も気づかない学校の構造の矛盾(ルールの穴)」に気づき、死に物狂いでそこへ飛び込む。
後日談:
- なんとか学校の敷地外に這い出し、俺は無事に卒業式を迎えることができた。 だが、あの点呼の最中に頭から削り取られた「同級生たちの記憶」は、大学1年になった今も、完全には戻っていない。 大学の講習や新しい生活に追われながらも、ふと高校の卒業アルバムを開くことがある。 あの日、あの無機質な校内放送で、俺の番号の直前までに名前を呼ばれた連中の顔だけが、どうしても思い出せないんだ。写真には名前も顔もはっきりと写っているはずなのに、脳が認識を拒否しているかのように、どんな声で、どんな風に笑う奴だったのかが、綺麗さっぱり消えている。 幸い、今住んでいるアパートの部屋では変な音もしないし、何かが襲ってくるようなことも一切ない。俺は普通の大学1年生として、平穏に暮らしている。 ただ、一つだけ、どうしても説明がつかない不可解な事実がある。 大学の入学手続きをする際、高校から発行された「調査書」や「在籍証明書」の控えを整理していた時のことだ。 俺のクラスのクラス名簿のデータだ あの日、あの放送で俺の前に名前を呼ばれた同級生たちの人数分だけ、名簿の通し番号が綺麗に欠番になっていた。 例えば、5番の次がいきなり10番に飛び、12番の次が18番に飛んでいるような状態だ。 先生方に聞いても、「いや、最初からそういう編制だったはずだよ」と、誰もその欠番を不審に思っていない。 あの学校の土地は、あの日、本当に生徒たちの存在をシステムごと『消去』したんだ。 そして、俺の出席番号。 俺は自分の番号が呼ばれる直前で逃げ切った。だから、名簿にも俺の記録はちゃんと残っているし、こうして大学1年生になれている。 だけど、あの名簿の俺の通し番号のすぐ横にだけ、印刷のバグなのか、それともあの警備員のおじいさんの端末の仕業なのか。 老眼鏡で見なければ気づかないほど小さな、擦り切れた黒い灰のような文字で、こう印字されていた。 『保留』 俺は逃げ切ったんじゃない。あの学校の土地の数合わせから、一時的に「保留」にされているだけなんじゃないか。 そんな根拠のない不安だけが、1月が終わるたびに、今でもほんの少しだけ胸をよぎる そしてこれら3つの体験ではなかった 恐ろしい体験を俺は高校3年間ずっと別々のを体験している
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