
長編
連れて行かれる
匿名 5日前
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っても、根本的な解決になるとは思えない方法だし、そもそも幽体で物に触れられるのかしらん。
しかし、幼く無知な僕には、それが一番の解決方法に思えてなりませんでした。
その名案を思いついてから、僕は毎晩、「あの感覚が来たら、すぐ近くの物を掴むんだ!!」と念じながら眠りにつきました。
僕が寝ているベッドには調度、
掴むのに手ごろな柵みたいなものが付いていたので、念のためその柵を掴みながら眠ったりもしました。
しかし、それからあの感覚はこちらの意図を察したかのようにパタリと止み、怖い夢もしばらく見る事はありませんでした。
「もう諦めちゃったのかな??」
「もうあの感覚は来ないんじゃないかな??」
そう思いました。
つくづく甘かったと思います。
ここまでこのお話を読んでいただいている方々は、この結果に少し落胆してしまうかもしれません。
何か禍々しいモノや、幽霊、妖怪の類いを期待していた方には先に謝っておきます。
期待させてしまって本当にすみません。
しかし、その時の僕にとっては、幽霊や、妖怪の類いよりもはるかに恐ろしいものだったのです。
その時僕が見たもの…いえ、正確には見ていないのです。何も…。
僕を引っ張っている「何か」。
部屋の天井。
逆さ吊りになっている状態なら不可思議なく見えるはずの自分の足。
それら全てが、見えない。
僕の視界には、ただただ暗闇が広がっていました。
本来なら見えてしかるべきそれら全てが、完全に闇に呑まれてしまっているのです。
天井まではいかなくとも、せめて自分の足が視認できれば、
あるいはその足に得体の知れない「何か」が付属してしまっていたとしても、その方がまだ安心できたかもしれません。
自分の半身が見えない。
それはつまり、僕の半身がすでに「あちら側」に「持って行かれている」ということではないか。
幼い僕が、あの状況で、そこまで思考を廻らせることができたかは定かではありません。
しかし、その時の僕は今までに感じた事のない、
そしてこれから先の人生でも感じる事はないであろう、未曾有の恐怖に囚われました。
何も見えなくとも、その「何か」が僕を引っ張ることを止めようとはしません。
それどころか、先程よりも勢いを増しているようにも思えます。
そう、今回は、今回ばかりは、僕が連れて行かれる場所が夢の中とは限らないのです。
例え夢の中であったとしても
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- あらよっと♪あっち側〜♪こっち側〜♪とめいとぅ
- 連れてかれろ!なの。