
中編
真っ赤なもみじ
SHO 2017年1月5日
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私が祖母の実家に里帰りしたときの話です。
実家は山奥にあり、住民もほとんどいませんでした。
この年、私は秋の季節に里帰りしたので、山は見事に赤や橙色に染まっていました。特にもみじは燃えるように真っ赤でした。
「おばあちゃん、もみじ綺麗だね〜。」
と、話しかけたのですが、祖母はあまり嬉しそうではありませんでした。というより、明らかにもみじの話題を避けていました。
私は不思議に思っていたのですが、しばらくしてから、祖母がその理由を話し始めました。
祖母がまだ小学生の頃、同い年のミカちゃんという子と祖母は親友だったそうです。
家が近いということもあり、祖母とミカちゃんはよく学校帰りに遊んでいました。
学校から家までは山道が続いていて、近くには小さな谷もありました。
祖母とミカちゃんはその日、あの谷の近くまで探検しようとなったそうです。
季節は秋と冬の境い目、辺りはすっかりと暗くなっていました。
谷の所までたどり着き、祖母は谷の下を覗き込みました。
向い側はもう暗くてあまり見えなかったそうですが、下は川が流れていて、ザァーッと流れる音も聞こえたそうです。
祖母とミカちゃんは普段見る事の出来ない光景に夢中になって下を見ていました。
そして、悲劇は起きました。
祖母はもう帰ろうと思い、立ち上がって戻ろうとしました。
その時、後ろで
「あっ」
本当に、小さな悲鳴だったそうです。
祖母が後ろを振り返ると、小柄なミカちゃんの体はどこにもありませんでした。
祖母は急いで谷の下まで行き、ミカちゃんを探しました。
小さな谷とはいえ、川まで行くのにかなり時間がかかったそうです。
ミカちゃんを見つけ駆け寄りましたが、もう虫の息だったそうです。
ミカちゃんは暗くてよく見えないのか、祖母の体をペタペタと触って確認していたそうです。
ペタッ…ペタッ…ペタッ…
ミカちゃんの小さな手は、液体で染まっていました。
祖母はそれが血だとすぐに気がつき、恐怖を感じたそうです。
結局、祖母はそこで座って泣くことしか出来ず、谷の近くを通った通行人が警察に通報。
ミカちゃんはその場で亡くなったそうです。
祖母の服は、ミカちゃんの血だらけの手形がたくさんついていたそうです。まるで真っ赤に染まったもみじみたいに。
両親はその姿を見て絶句したとたか。
それが祖母がもみじを避ける理由でした。
…
しかし、私が最も怖かったのはその後の祖母の一言でした。
「今でも、ミカちゃんが遊びに来るんだよ。この家に。」
私はその言い方が冗談には聞こえませんでした。
その話を聞いた夜、私は風呂に入るのが怖くてたまりませんでした。
特に顔を洗う時は目をつぶれなくて…
目をつぶって、開けたら目の前の鏡にミカちゃんがいそうで…
小さな手形が鏡一面にあるのでは、と。
まぁ、けっきょく里帰り中はなにもありませんでした。
本当に恐怖を感じたのは、その数ヶ月後。
祖母が肺炎で亡くなり、山奥の実家で遺品整理をしていた時です。
業者にも頼んで一緒に片付けていたのですが、1人の業者が怖い顔で
「あまり、よからぬものを見つけまして…」
と、一緒に来てくれてと手招きして、祖母のタンスの中を指し示しました。
もう、見ちゃった〜て感じでしたね。
かなり昔の子どもの服とズボン。その一面に歳月を経て黒ずんだ手形がありました。
何を考えて祖母はこのような物を残したのか。
こればかりはそのまま捨てるのはまずいと思い、お焚き上げしてもらうために私が持ち帰りました。
これがまずかったと思います。
その日の予定があったとはいえ、やはりその日すぐにお焚き上げしてもらうべきでした。
祖母の服を持ち帰り、洗面所で顔を洗って鏡を見た時、心臓が飛び出るかと思いました。
真っ赤なもみじ…ではなく、乾いた手形が数カ所に点々とついていました。
(ちなみに、その日以来、風呂で顔を洗う時も目をつぶるのが怖くて出来ません笑)
顔を拭くのも忘れて携帯だけ手に持って急いで家を飛び出し、近くのコンビニで友人に電話。
友人はそういう類の話は全く信じない人でしたが、とりあえずその日は友人の家で夜を明かしました。
翌日に友人を半ば強引に引き連れて、私の家まで行き、玄関に置いてあった祖母の服の入ったダンボールを持って、某有名なお寺でお焚き上げしてもらいました。
その日以来、手形も見ていませんし、心霊現象も起きていませんが、やはりミカちゃんが私に何を伝えたかったのか未だに気になりますね。
後日談:
- 顔を洗う時は気を付けて下さい。
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