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長編

さとし君、ありがとう

ぼろぼろ 2018年9月13日
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先週、北海道を大きな地震が襲った。 幸い家は停電だけで避難する事なく済んだのですが… 6日未明、大きな音と揺れで目が覚めた。 すぐには動く事が出来ずジッとしていると 照明も消えた。 この日に限って私は寝付けず、二階のリビングのソファーで 横になりながら本を読んでいたのだが いつしか照明も 点けっぱなしで寝てしまっていた。 なので、大きな音と揺れで目が覚めた時、 照明が消える瞬間をハッキリと見た。 生まれて初めての経験だった。 “これはヤバいな…” と思いながら 飼い犬を抱きしめて揺れが収まるのを待った。 揺れが収まると一階で寝ていた旦那と子供達が 二階へと上がってきた。 余震も続いているので家族皆、リビングで過ごした。 窓から外の様子を伺ったが誰一人として 外に出ているものは居ない。 街灯も消えてしまったので暗闇の中 外に出るのも危険だと判断したのだろう。 余震と停電という不安の中 明るくなるまで辛抱した。 明るくなると幾分 不安から解放され、 停電で朝食が作れないという心配まで 出来るようになった。 非常食も用意はしてあったが とりあえず、すぐに食べられる物をと コンビニに行く事にした。 駐車場は車と人で ごった返していた。 店内に入ってみたものの 惣菜や弁当やパンの類いは売り切れていて 仕方なく菓子類を買うしかなかった。 飲料と電池の蓄えもしてあったが いつ通電するか分からないので 電池式のモバイルバッテリーが欲しかった。 が、やはりモバイルバッテリーも 売り切れ。 仕方なく他に買えそうなものは無いか?と 店内を物色していると 目の前を小学校低学年と思しき男の子が 左方向から右方向へと走り去って行った。 “あの子…” その時になって思い出したのだが 私が店に入った時にも私の目の前を 走り去って行った男の子が居た。 その時は欲しい物が手に入るかどうか… そちらに神経が集中していたので 気にも止めなかったのですが その時、違和感を抱いたのです。 スーパーと違い棚と棚の間のスペースは それほど広くは無いし レジ待ちの行列が出来る中、合間をぬって 物色しなければならない店内で “なんであんなに軽快に走る事が出来るのだろう?…” 不思議に思った私は、男の子が走り去った方へ 移動してみました。 するとそこは突き当たりになっていて 本来、野菜や果物が置かれている コーナーだったのです。 そして、そのコーナーのすぐ側に レジ待ちの最後尾の人が並んでいたので そこを走り抜けて行く事は どう考えても無理が あります。 “もしかしたら、列に親御さんが並んでいて 親御さんと一緒に並んでいるのかな?” と思い、覗いてみたのですが 男の子は居ませんでした。 不可解ではあったのですが とりあえず、目の前の果物を 買おうかどうか思案していると 果物の横に 一つだけ “モバイルバッテリー” が 置いてありました。 カゴも持たずに両手で物を持っている人も 居ましたので、そんな誰かが落としてしまったのかな? と思いつつモバイルバッテリーを買う事が出来ました。 レジに並びながら周りを注意して 見ていたのですが 例の男の子は居ませんでした。 その日、実家の母からも こんな話を聞きました。 実家のすぐ近くに従兄弟の家が あるのですが たまたま家を建て直す事になっていて 家族はアパートに仮り住まいしていたのです。 地震のあった前日、最後の荷物の整理に 家族で来ていたのですが、 叔父さんだけ、 “この家ともお別れだから今晩はここで寝る” と言って一人で残ったそうです。 そして、未明の地震。 明るくなってから母が外に出てみると 余震が続く中、男の子が一人、家の前を 走り去って行ったと言うのです。 親も一緒なのか?と心配になった母が 道路に出てみると男の子は一人だったそうです。 危ないと思った母は自分の年も忘れて 夢中で追いかけたそうです。 曲がり角を曲がった所で男の子は 従兄弟の家の前で立ち止まり ジッと従兄弟の家を見ていたそうです。 母は無人の従兄弟の家に何かあるのか? と思い、急いで中に入ってみると 怪我をして動けなくなっていた叔父さんを 発見して驚いたそうです。 アパートに居た叔母は駐車場から 車が出せない状況だった事と もしかしたら叔父さんは妹(私の母)の家に 避難しているかもしれないと思い、 明るくなるまで下手に動かない方が良いと 判断して、待機していたそうです。 因みに、叔母はケータイ電話を 持っていませんので、 連絡手段が無かったのです。 しかし、早朝に母に発見され叔父は無事に 病院で手当てを受ける事が出来たようです。 一段落着いた時、母は男の子の存在を 思い出したそうです。 叔母に話すと “それはきっと、さとしに違いない” “さとしが助けてくれたんだ” そう言って、泣いたそうです。 母も薄々、そう思っていたそうで 叔父と三人で泣いたそうです。 さとし君、… 私には二つ年上の従兄弟が居たのですが 小学校に入学しても殆ど通学する事なく この世を去ってしまいました。 その従兄弟が “さとし君” です。 母の話を聞くまでは思いもしなかったのですが きっと、私がコンビニで見かけた男の子も “さとし君” だったのではないか?… そう思うのです。 さとし君、ありがとう。 ※ この話には後日談が あります。 叔父の家に残っていたものは処分するはずのもので “欲しい物があったら持っていけ” と言って叔父は母に 合鍵を渡していたそうです。 そして、あの日、母のエプロンのポケットの中に その合鍵が入っていたので、すぐに家の中に 入れたそうです。 その時は気が動転していて気付かなかったそうですが 後になって なんでエプロンのポケットの中に 合鍵が入っていたのか不思議に思ったそうです。 叔父から預かった合鍵は自宅や車のキーと一緒に 鍵を入れる小物入れに入れておいたはずだと 母は言うのです。 母が無意識のうちにポケットに入れたという 事なのでしょうか… 最後に、 震災で亡くなられた方々の ご冥福をお祈り申し上げます。

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