
長編
通勤電車の怪
匿名 4日前
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、次第におじさんのことを考えることは無くなっていきました。
1年程たちました。
ある朝の通勤電車のなか、ふと周りを見ると見覚えのある顔がちらほらあることに気がつきました。
「ああ、この電車は入社当時いつも乗ってた電車だ」
そう思いながらうとうとしはじめ、気がついたら寝ていました。
ズシリ
右腕に衝撃を感じました。
驚いて目を開けましたが、そこには何もありません。
とっさに右側の座席を見ると、茶色い髪を束ねた女子大生風の女の子が目を閉じて座っています。
気のせいだと思うことにしましたが、右腕に感じた衝撃はあの時の感触にあまりにそっくりでした。
ほのかに柑橘系の甘いポマードの香りがしました。
「あのおじさんは亡くなったんだ」
直感的にそう思いました。
それから電車に乗っているとしょっちゅう右腕にズシリと衝撃が走るようになりました。
目を開けても何もありません。
一度気のせいだと思い込むためにわざと目を開けなかったのですが、目を閉じている間ずっと右腕に何かが乗っている感覚が消えません。
目を開けるしかありませんでした。
不思議な事に、朝電車に乗っているとたまに急激な眠気に襲われるようになり、そうしてうとうとした時に必ずズシリと来ました。
衝撃を感じて目を覚ますと柑橘系の甘いポマードの香りがします。
座席に座らないようにもしたのですが、前日の仕事が遅かったりするとどうしても座りたくなります。何で自分なんだと怒りが湧いてきて思い切って座るのですが、右腕の衝撃とともに座ったことを後悔しました。
私は電車通勤が苦痛になり一人暮らしをする事に決めました。
仕事の合間に部屋を探し、1ヶ月程で引っ越しの準備が整いました。
一ヶ月の間は一度も座席に座らなかったのですが、それでも同じ電車のなかにあのおじさんがいるのかと思うとゾッとしました。
転居の前日の晩、仕事終わりに珍しく飲みに行き、遅い時間の電車で家路に着きました。
実家のある家の最寄り駅に近づくたびに人が降りていき、車内がガランとしていきました。
酔っていた私は何も考えずに座席に座り、うとうとしはじめました。
どれくらい寝ていたのでしょうか。
右腕にズシリと衝撃を感じて目が覚めました。
目はまだ閉じたままです。
右腕に何かが乗っている感覚があります。
「しまった」
今までよりもかなり強く、柑橘系の甘い香りが漂っています。
右腕にある重い感覚をすぐに
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- なんだ、作話かとー
- 怖かった。よくできている。お名前
- やっぱ取り憑かれると離さないもんね歩くスピーカー
- まぁ、不可抗力だけど 事故にでもあったと思って 憑かれるしかないなイリミナ
- 思い込みってすごい。冷たい鉄で火傷するくらいだからね。匿名