
私は、少し変わった体質を持っています。人とは違って、霊的な存在が見えるのです。子供の頃からその能力があり、今ではすっかり慣れてしまいました。お化けの姿は見えないものの、いつも見えるのは「手」や「足」といった部分だけ。まるで誰かが忘れた軍手のように、ふとした瞬間に現れるのです。
私が住む高層マンションでは、特に目立った霊的現象はなく、ただ時折現れる手に驚かされるだけでした。そんなある冬の夜、友人と飲み会から帰宅する途中、私は異様なものを目撃しました。エレベーターが開いた瞬間、視界の隅に「手」が見えたのです。その手は、まるで何かを訴えかけるようにこちらを向いていました。少し怖かったけれど、その時は「またか」と思っただけでした。
しかし、次の日、私はその手に触れてみたいという欲求に駆られました。友人が「触ったことある?」と聞いてきたのをきっかけに、興味が湧いてしまったのです。心の中で「触れたらどうなるのだろう」と思いながら、日々を過ごしていました。
それから数日、手は見えなくなりました。まるで私の気持ちを察知したかのように、近づいてこないのです。私は、友人との遊びをやめ、早めに帰宅するようになりました。そして、ついにその日が来ました。再び、あの手が見える。今度は、明確に私の目の前に現れたのです。
思わず手を伸ばすと、まるで生きているかのようにその手に触れました。冷たくて、何かがそこにあることを確かに感じました。その瞬間、耳元で悲鳴が響きました。「何をしたの!」と叫ぶ声が聞こえたのです。
驚いて振り返ると、私の後ろにいた友人が真っ青な顔をしていました。彼は私が触れた瞬間、何かを感じ取ったのでしょうか。私の目の前の手は消え、あたりは静まり返りました。
後日、警察が来て、私たちのマンションに関する噂を聞きつけたという。どうやら、数年前にこのマンションで行方不明になった女性の話があったらしい。私が見た手は、その女性のものだったのかもしれません。
それ以来、私は霊に触れたいという欲求を忘れることにしました。顔色の悪い人や、手の形が不自然な人を見ると、今でも思い出してしまうのです。もちろん、二度とあの手に触れたいとは思いません。
後日談:
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