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長編

心霊スポットに行った時のこと

匿名 2019年10月2日
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これは、俺が先輩と過ごした日々を書いた話になる。 別のアプリで投稿していたんだけど、試しにこのアプリでも投稿してみることにした。 本編に入りたいところなのだが、まず俺と先輩について知っておいてもらいたい。 大学の先輩の女性で、モデルには届かないとはいえなかなか綺麗な容姿をしている。 オカルトに詳しいらしく、幽霊が見えるらしい。 もっとも先輩の目が幽霊の様なのだが...。 すでに普通ではないのだが、出会いの瞬間がこれまた奇怪であった。 先輩とはあるバイト先であったのだが、先輩が初対面である俺に発した言葉が、『こんにちは』でも『よろしく』でもなく、『君、霊界とつながりが深いね』だった。 別に魑魅魍魎の類などと関わった覚えもなければ、見たこともない。 心霊現象の事はこれっぽっちも信じてはいない。 友人が出たと話しているのを『居るわけねーじゃん』とか思いながら聞き流していた。 先輩には、兄弟がいる。 兄(先輩は青兄と呼んでいるので俺は青さんと呼ぶ)が一人いる。 なのだが、本当は弟もいるはずだった。 出産予定日の3日前の2時35分、先輩の母親が病に侵されたらしい。 予想以上に急で、しかも重かったため病院でも対応しきれず流産に終わった。 苦しみだしてから、きっかり30分後だった。 流産した日、青さんは先輩に 「弟とお母さんが危ない。誰にも助けられない」 と言っていたらしい。 当時『青さん』は6歳、『先輩』は4歳だったため、まったくもって何を言っているのか理解できなかったそうだ。 青さんにも小さい頃から『霊感』があり、『幽霊』が見えていた。 さすがは、先輩の兄である。 この話で驚くべきなのは、青さんが唸りだしたのが、2時10分、苦しみだす25分ほど前だったという点だ・・・。 大学1年の春。 幽霊のような先輩と出会ってから1ヶ月ほど経った。 『夢の一件』があってからというもの、先輩が行っていた通り『いろいろ付き合っていく』ことになってしまった。 あれ以来大きな事件は無く、本当に先輩の言う『雑魚』ばかりだった。 ただ、そんな『雑魚』でも俺にとって、『見える』か『見えないか』というのは大きなことなのである。 「どんなに嫌でも見なければいけなくなる。今のうちに慣れておけ」 と、先輩は言って俺を心霊スポットへ連れて行く。 俺も、先輩以外に幽霊とも付き合っていかなければならなくなった現実を受け入れることにしたのだが、たった1ヶ月では慣れないというのが現実である。 先週の日曜日、先輩がまたも勝手に俺の家に上がりこんできた。 「はいはい、入るよー」 「え?せ、先輩!?何勝手に入ってるんですか」 「お前、鍵はちゃんとしなきゃだめじゃないか。危ないやつが入ってくるぞ」 「先輩のほうが危ないですよ」 本当に勝手だ。 先輩は、 「侵害だなぁww」 とへらへら笑って、部屋の真ん中にあるちゃぶ台の前の座椅子に座った。 いやもう、侵害とかの前に俺に人権は無いのかと聞きたくなる。 「いやぁ、外も暖かいことだし、外に出たらどうだい?」 「今日は、テンションが高いですね」 いつもよりも、目が輝いている。 大好きなオカルト話でも持ち込んだのだろうと思ったが、少し違った。 「聞いてくれ、青兄から良い話を聞いたんだ」 「先輩の良い話は、あまり信じられませんね」 それでも、へらへらし続ける。 よほど嬉しいようだ。 「で?どうしたんですか、今日は・・」 「それが聞いて驚け、新しい心霊スポットを見つけたんだ」 この辺りでは行ったことが無い心霊スポットなんて無いと言っていたため、場所を知るやいなや飛んできたのだろう。 「まぁ、だいたい予想はしていましたよ」 「うそだろぅ。オカルト系の事だとは思っていたけど、さすがにスポットだということは分かっていなかった。そうだな・・・怖い話とでも思っていたか?」 図星だ。 何で分かるんだよ。 やはりただの先輩ではないのだろう。 「当たっているようだね。では、当たった先輩に賞品『後輩と心霊ツアー』ゲット!!やったね」 拍手している。 何かもう、恐怖なんだが・・・。 ここ1ヶ月でここまで・・・というよりテンションが高い先輩を見たことが無かったため、凄く気持ち悪く感じる。 「どうせ俺には、行くか、行かないか選ぶ権利は無いんですよね」 「よく分かっているじゃないか。君には、『先輩との心霊ツアー』をプレゼントしよう」 何かめっちゃテンション高いけど・・・。 正直、全然嬉しくない。 ボサボサの髪を水で整えて、外着に着替え、塩と懐中電灯をリュックに詰めて、外に出た。 「準備遅かったな、何をしていたんだ?」 「すみません、準備していました」 先輩は、俺のリュックをまじまじと見つめる。 「何が入っているんだ?」 俺の周りを回りながら、リュックにデコピンをくらわす。 「懐中電灯と塩とかあと前から入れていた物達ですね。お守りとか、魔除けの札とか・・・」 俺の事をにらみつける。 不満なようだ。 さすがに軽装備過ぎるか? なんとなく、お守りを携帯するようになってしまったのだが、先輩にとっては子供だましに過ぎないのかもしれない。 「おまえさぁ」 「すみません、近いうちに揃えておきます」 「何の話だ?どうでもいいけど、そんなものいらん」 「え?」 「そんなもの、いらないって言っているんだ。幽霊と戦う気か?」 そっちかい。 やはり、子供だましに過ぎないか・・・。 リュックを置こに行こうとする俺に先輩は 「・・・懐中電灯とありったけの電池は持ってこい。いつもより暗いらしいからな」 「分かりました」と返事をして俺は、リュックの中身を電池に替えた。 スポットに向かっている間もずっと先輩はテンションが高かった。 ずっと、「青兄には、適わないなぁ」とか「どんなのがいるのかなぁ?」とかブツブツ言っていて、いつもの先輩っぽくなかった。 「そろそろ着くぞ」 と、先輩に言われた時、時刻は9時を10分ほどすぎていた。 角を曲がると、そこには古そうな建物が建っていた。 これは・・・病院か? と、思ったとき、 「よぉ。やっと来たか」 という声が聞こえてきた。 木の陰から男の人が出てきた。 近づいてきた男の人は、高身長で体格が良くスポーツ男子といった容姿だった。 彼が先輩の言う『青兄』だろうか。 手を差し出してきた。 「よろしく。僕は、黒人<すみと>。君は、真君だね。妹から聞いてるよ」 「あ、よろしくお願いします」 「早く行こうよ」というような目線を黒人さんに送っていたので行くことにした。 入り口を通ったとき、何か落ちたような音がして驚いてしまった。 先輩と黒人さんが俺を見て笑っていたので、俺は恥ずかしくなってズカズカ進んだ。 先輩の言っていた通り中は、窓はあるのだが暗く、懐中電灯が無いと前を歩くのはつらかった。 俺には・・・。 なぜか、黒人さんは1番前をトコトコと進んでいた。 「黒人さんは、目がいいんですか?」 「いや、目が良いというよりは、夜目が利くのかな。昔から暗いところが好きだったから」 心霊スポット巡りでもしていたのだろうか。 小さい頃から幽霊の存在を認められるのか・・・強いな。 「そんなことより、黒人さんって固いな。青でいいよ」 「そうだね。青兄に『スミ』は合わないよ」 「分かりました」 しかし、やっぱり気がかりなことが。 「どうして、青なんですか?」 「ん?ああ、静がつけたんだよ」 「誕生日が9月14日だから誕生石のサファイアの色の青。私はアクアマリンだから・・・」 「青ですね」 兄弟そろって青なのか。 「俺は、エメラルドなんで緑ですね」 「よろしく、緑君」 「お願いします、青先輩」 3人で笑う。 やはり、2人のときとは全然違う。 何か、心霊テンションではない。 先輩以上に関わりやすい人だと思った。 「何もいないな」 「あぁ、静が怖いからじゃないか?」 「確かに、そうかもしれませんね」 「ちょ、2人とも」 何か、楽しい。 すべての部屋を回ってみたが、闇とベッド以外はほとんど物が無く、ただ時間だけが過ぎていた。 病院を潰すとき、物はほとんど運び出したのだろう。 「そろそろ、20分ぐらい経ちましたかね」 「そうだね、30分ちょい経ったと思う」 「まだ、2階もあるみたいだけど、どうする?」 階段の前で止まり青さんが振り返る。 俺は、先輩のほうを向く。 先輩も俺のほうを向いていた。 目が合った瞬間、不覚にもドキリとしてしまった。 「いつまで、見詰め合ってるんだ?2人とも仲いいな」 「うらやましいぜ」とか言いながら、階段を上がっていく。 いや、そんなわけでは・・・。 2階もこれと言って特別な事も物も無く、強いて言うならばトイレが1階よりも綺麗だった。 外から見た様子とは違い、闇を掃除すればとても綺麗なところだ。 ただ、前にも誰か入ったようで、落書きはあった。 「そろそろ、1時間だと思うが、時計を持ってくればよかったな」 「あ、俺持ってますよ」 あれ? 無い。 入る前は、確かに持っていたのに。 「どうした?無いのか?」 「はい、落としてしまったみたいです」 「んじゃそろそろ出るか」 「すみません」 外に出る時も特に何も無く、ただただ3人で楽しくおしゃべりしただけだった。 外に出ると、入り口付近に時計が落ちていた。 最初の音は、これだったのか。 「壊れてないか?」 と青さんが聞いてきたので、秒針を見て動いているのを確認し 「大丈夫っぽいです」 と答えた。 「とんだ無駄骨だったようだな」 「静が怖いせいで・・・」 「青兄、まだそのネタ言うの?!」 仲良いな。 「そろそろ帰りますか」 「何にも無かったのは、残念だな・・・」 先輩は、本当に楽しみにしていたからな。 笑って帰ろうとしたとき、青さんが 「いや、そんなことなかったみたいだな」 と言ってきたので、振り返ると時計を指差していた。 「どうしたんですか?」 と聞いて、時計を見た。 このとき、この病院の恐ろしさに気付いてしまった。 先輩が覗き込んだ俺の時計は、 9時20分を示していた。 <完>

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