りを小突くんだよ。 最初はじゃれてると言うか、怖い目にあったばっかりだし ビビらせようとしてるんだと思ってたんだ。 でもあんまりにもしつこい。 何度やめろって言ってもやめない。 俺は痺れを切らせてツレを見たんだよ。 そしたらツレ真っ青な顔で俺の手元を指さしてるわけ。 なんだよ、と思いながら本を閉じたら 居たんだよ、女の頭が すごい角度で俺の顔を覗き込む女が雑誌の下にさ。 その女、黄色い歯をのぞかせてニチャッと言わんばかりに口だけを動かせて笑ってさ こう言ったんだ。 「もう来ないでね。」 って。 俺は確かにそりゃあ怖かったんだけど ツレに腹立ってるし女は汚くて気持ち悪いし もう頭来ててさ、 その女コンビニからでてったんだけど 追いかけたんだよ。 そんでさ、その女、外に出た途端四つん這いになって山の方に走っていった。 今考えるとほんとに奇妙で気味の悪い思いをしたなって思うんだよ。 彼はそう語り終えて、怖い話でしょ、と言った。 私は彼が嘘をつくタイプでは無い事を知っている。