
俺が社会人になって間もない頃、体を鍛えるために仕事帰りに市民プールに行っていた。
市民プールでは夜8時半まで営業していて、仕事が終わって7時半にプールに着いたとしても1時間くらい泳げる。
中学生や高校生のときは水泳が好きでよく市民プールに行っていた。
そのときと同じように市民プールで泳げるのが懐かしく思った。
屋内プールを流れているBGM、にこやかで穏やかな感じのプール監視員など。
そのあとプールに入ると、水の程よい冷たさが日常の煩わしさを忘れさせてくれる。
少しフリーゾーンでならしたあとコースロープの引いてあるゾーンへ。
ここは途中で立つことなく25mを泳ぎ切るゾーンだった。
ひたむきに泳ぎ続けたあの頃を思い出す。
プールに何回か通ううちにある人のことが気になるようになった。
それはいつも25mのコースを泳ぎ続けている若い女性、見た感じ中学生か高校生くらいのかなり若い子だった。
ゴーグルと水泳帽をつけているので分かりにくいが、顔の造りは小さく、体も細いため割と綺麗な子だろうと想像できた。
こんな時間に若い女の子がプールに来るのが少し珍しいのと、さらにその子は俺より体力があるんじゃないかと思うくらい休むことなくひたすらに泳ぎ続けていた。
俺も通っているうちにその子に負けないように泳ぎ続けた。
少女は体が細いためクロールの手の動きやターンの仕方とかが軽やかだった。
俺は少女に興味を持ち始めた。それはライバルとしてでもあり、異性としてでもあった。
あの少女はほぼ毎日来ていた。
俺も頑張って少女に負けないように泳いでいた。
少女のことはプールでしか見ることはなく、プールの外で見ることは全くなかった。
・・・
それから約20年。
俺には娘がいるが、今中学生の娘は水泳部で活躍していた。
小学生の頃から水泳の選手に選ばれていて、中学ではオフシーズンでも屋内プールでの練習を欠かせなかった。
そして、中学生になった娘を見るうちに誰かに似ていると思うようになった。
まさか、あのときの?でもまさかな。
そう思っていたが、娘の水泳の大会を見に行ったとき。
水着でプールサイドに立ちゴーグルをつけたその姿は、紛れもなく20年前に市民プールで見たあの少女そのものだった。
まるで今の娘が過去に戻って、あのときの俺の前に現れたかのように。
他人の空似かもしれないが、娘を見ていろいろ不思議な感じがしていた。
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