
中編
最後のお客様
匿名 3日前
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休日、車であてもなく一人でドライブするのが俺の趣味だった。
その日も、隣の県のそこそこ有名な市まで出かけた。
駅前などの中心市街地は栄えているが、郊外に出ると何もない田舎の町という感じだった。
俺は海岸線を走らせていた。
その日は曇りのせいか、昼間の海なのに寂しい感じがした。どこへ行っても、目を楽しませるものはなかった。
昼間なのに微妙に暗い空が、妙に不安な気持ちにさせる。
そんな中、俺は一軒のラーメン屋を見つけた。
海の近くのたまたま通りかかった道にあるラーメン屋で、駐車場もあったので停めただけだった。
ラーメン屋は昔ながらの古い感じで、中に入るとお爺さんって感じの年老いた白いコックコートの男性が俺を見た。俺は「あんまり美味しそうな店じゃないな。」と思ったが、入ったからには仕方ないと思いラーメンを注文した。
年老いた男性は、よぼよぼの体をおもむろに動かしながらラーメンを調理していた。
俺はますます不安になった。
ラーメンが美味しそうか以前に、老人が今にも倒れそな雰囲気だったからだ。
そして、ラーメンが出来上がり、老人はラーメンを俺のテーブルに置いた。店や老人の雰囲気とは対照的に、目の前には熱い湯気とうまそうな匂い、そしてコシのありそうな麺と透き通ったスープの美味しそうなラーメンがあった。
俺は割箸を素早く割ってラーメンを口にした。
うまい!美味すぎる!!ラーメンは、感動するほどうまかった!
俺はあっと言う間にラーメンを平らげ、他にも注文したい気持ちになったが、目の前のよぼよぼのお爺さんを見ると負担をかけるのも申し訳なく思い、会計にすることにした。
会計は、僅か300円!
あまりの安さに、さらに申し訳ない気持ちになった。
1ヶ月後。俺はまたそのラーメンを食べたくなり、少し遠いが隣県のその町に来た。
その日は快晴だった。先週とは対照的に海を走らせているとワクワクした気分になる。
道はほぼ覚えていたので、海沿いの道を少し曲がり、あの駐車場に停めた。
ふとラーメン屋の方を見ると、看板がなくなっていて店もこの前よりボロくなった感じがした。
「何があったんだろう?」
と思いながら店に近づくと、店は完全に廃墟になっていた。数日前に閉店したって言うものではなく、ずっと前に廃業した感じ。
俺はしばらくその場に立ちすくしていると、近所の人が心配そうに俺に声をかけた。
話を聞いてみると、このラーメン屋は10年以上前に潰れていて、店主
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