
新しい職場に転職が決まり、都心の高層マンションに引っ越すことになった。会社が契約したこのマンションは、立地も良く、快適な環境だった。
引っ越し当日、無事に荷物の搬入を終えた後、私は管理人室を訪れた。小窓越しに管理人と初めて顔を合わせた。
「こんばんは、今日からこちらに住むことになりました、(私)と申します。よろしくお願いします。」
管理人はメガネをかけた中年の男性で、私の挨拶に対し、少し緊張気味に頷いた。「ああ、そうでしたか。よろしくお願いします。」「こちらは野良猫が多い地域なんです、そういうのに気を付けてくださいね。」
周囲には「猫に餌を与えないで」といった手書きの看板が目立ち、管理人の言葉は少し奇妙に感じたが、特に気には留めなかった。
引っ越してから2週間後のある夜、遅くまで仕事をしていた私は、溜まったゴミを捨てに行くことにした。時計を見ると、すでに10時を過ぎている。
「まだ収集車は来ているかな…」と思いながら、ゴミを捨てると、ふと視線を感じた。管理人がそこに立っていた。
「ゴミ捨ては10時までと言いましたよね?」彼の表情は冷酷だった。
「ごめんなさい、気を付けます…」と私は答えるしかなかった。彼の横を通り過ぎ、マンションに戻ると、何か不気味な気持ちが募った。
その日の収集は少なかったため、次の収集日には捨てることをためらってしまった。時計はまたもや10時を過ぎていた。
「10時過ぎたらどうなるんだろう…」そんな疑問が頭をよぎり、捨てられたゴミが気になり、ベランダに出て様子を伺うことにした。冷たい風が頬を撫で、外は静まり返っていた。
しばらく待っていると、管理人がゴミ捨て場に姿を現した。周囲を警戒するようにキョロキョロと見回しながら、彼は何かを捨てている。彼が見つからないように、私はベランダの隙間からその様子を観察した。
すると、突然、ゴミ捨て場から猫の鳴き声が響いてきた。その声は弱々しく、すぐ近くから聞こえてくる。私はその音の方向を目指して目を凝らした。
目の前のゴミ袋の一つが、黒いビニール袋を抱えているのが見えた。ビニール袋の中から動くものがある。何が入っているのか、見たくもないのに目が離せなかった。鳴き声は次第に小さくなり、ゴミ袋の動きも止まった。
その時、収集車が到着し、10時32分にゴミを収集し始める。私は思い出した。あのゴミ袋は、管理人が持ってきたものだったのだ。彼は何を隠していたのか…?
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