お題 短編
柄じゃないから

俺にはある幼なじみが居た。A実としよう。
当時の俺は鈍感すぎたのだが、今思えば好き同士だったのだろう。
A実とは話が合うのもあって、男友達よりも一緒に居ることが多かった。
話が合う、っていうのは2人とも怪談が好きだったんだ。
当時は掲示板なんかが盛んだったから、怖い話を探しては面白いのを見つけたら共有なんかしていた。
ヒトコワなんてジャンルが流行り始めて、怖い話も結局人間の仕業ってオチのものが多くなった。
その中でバレンタインのチョコレートに血を混ぜるってのがあったんだよ。
俺は単純に気になって女子として、こういうことしたいと思うか、A実に聞いた。
するとA実は「いや、私は柄じゃないから」って答えたんだ。俺は違和感を覚えた。
「やらない」「分からない」とかじゃなくて、「柄じゃないから」って何だ?
柄だったらやるのか?
でも、好きだったから変な事聞いて嫌われたくなくて何も言わなかった。
それからしばらくして、A実から手作りのチョコタルトをもらったんだよ。まさかな、って頭によぎったのは血を混ぜたチョコの話だ。
ちょっと潔癖なところもあったから、俺は“一応”食べずに捨てた。
翌日のことだった。
A実に言われたんだよ。
「昨日のタルト、食べなかったでしょ?」
俺はやっと気付いた。
柄じゃない、はA実のことじゃなかった。
ちょっと潔癖症で、手作りのお菓子とかを食べる柄じゃない、俺のことだったんだ。
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後日談:
- 俺が本当に怖かったのは、チョコタルトに何が入っていたかじゃなくて、俺が食べないってことを見越しているA実が何より怖かった、今でも。 俺の行動を俺自身よりもっと見越しているA実のことが。
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