
新卒の私は、大学の近くにある古びた高層マンションに引っ越すことにした。リフォーム済みの部屋だったが、外観は古びていて、フロアの廊下には時折嫌な臭いが漂っていた。大家は、ここに住む者の心の安らぎが大切だとしきりに言っていたが、何かが気にかかる。しかし、就職したばかりで忙しかったため、特に深く考えずに引っ越した。
冬の寒い夜、仕事が終わって帰宅すると、部屋の中は静まり返っていた。しばらくしてから、天井から水の滴る音が聞こえてきた。最初は雨漏りかと思ったが、どうにもその音は規則的で、まるで誰かが水を流しているようだった。気持ち悪さを感じながらも、仕事の疲れを癒すためにそのまま寝ることにした。
数週間後、同僚と話していると、私の顔色が悪いと心配されることが増えた。そんなある日、仕事中に知らない番号から電話が鳴り、出てみると大家からだった。「あなたの部屋の上階で火事が起きました。すぐに戻ってください。」と告げられた。急いで帰宅すると、上の階からの出火で、私の部屋は消火活動によって水浸しになっていた。上階の住人は、ストーブの不始末が原因だと説明された。
その後、マンスリーホテルに引っ越し、新しい生活を始めた。引っ越しから一ヶ月後、友人に顔色の変化を指摘され、考えを巡らせた。あの部屋に戻らずに済んだことに感謝しつつ、ふと気になったのは、火事後の部屋のことだった。
事故物件サイトを調べたところ、私が引っ越した数ヶ月後、あの部屋は事故物件として登録されていた。前の住人の事故もあったのかもしれない。あのまま住んでいたら、私の名前も事故物件リストに載っていたのだろうか。ぞっとする思いがした。冬の夜に聞こえた水の音は、何かの警告だったのかもしれない。まるで、私に逃げる準備をさせるために。何がこの部屋を苦しめていたのか、考えると恐ろしい。私の知らないところで、火災の影が静かに忍び寄っていたのだ。
後日談:
後日談はまだありません。
この怖い話はどうでしたか?
chat_bubble コメント(0件)
コメントはまだありません。



